江戸時代に産声をあげて、400年以上の歴史を持つ色街、東京・吉原。この街で働く女性たちは、長引くコロナ禍をいかに生き抜いているのか――。『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)、『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)の著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏が現地を歩いた。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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「人と会うのが好きですし、“ナマモノ”商売だと思う」
スカウトとして吉原に女性を紹介している龍雄(36、仮名)も、大いにコロナの影響を受けているという。
「もうコロナで完全に開店休業状態ですね。俺たちの仕事っていうのは、人と会ってナンボのところがあって、実際に人と会うのが好きですし、“ナマモノ”商売だと思うんです。人との繋がりによって、次の何かが生まれたんです。それが、このコロナで街に出て人と会うのが厳しくなっちゃったじゃないですか。活力が失せますよね」
実際にコロナの影響で仕事内容も変化したという。
「リモートとかで打ち合わせをしたんですけど、実際に会うのと全然違いますし、やる気が起きないですよね。この状況だから働きたい女性もいっぱいいると思うんですけど、潰れている店も多いですし、暗い話ばかりですよ」
コロナの実害を龍雄自身も被ったという。
「最初の緊急事態宣言が終わった去年の8月ぐらいに情報交換もあって、仲間たちと飯を食いに行ったんですけど、何日かして、微熱が出て、体がすごいだるいんで、おかしいなと思って検査を受けたらコロナの陽性だったんです。すぐに入院となって、頭痛と肩甲骨の痛みで、症状はたいしたことはなかったんですが、8日入院したんですよ」
龍雄は現在、結婚し、2人の子どもがいる。幸いにも家族には感染しなかったが、それ以来元キャバ嬢の嫁との関係がぎくしゃくするようになったという。
「嫁にめちゃくちゃ怒られて、それから、しばらく人とは会うなといわれて、ストレスも溜まりまくりですよ。まだ子どもがいるから、離婚とはならないですけど、ちょっと考えちゃいますよね」