ストーカー犯の正体は、なんと創業者一家の次男の…。大手製薬メーカーの経営者が元社員の女性をストーキングしていた同事件。当時、本社の副社長、子会社の社長という要職に就きながらも、軽率かつ卑劣な過ちを犯してしまった理由とは? 2010年に起きた驚きの事件の顛末を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©AFLO

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エリート生まれ・エリート育ちの43歳

 上江修(当時43)は誰もが知る大手薬品メーカーの創業者の次男として生まれた。大学卒業後、銀行勤務を経て、父親の経営する会社に入社。29歳で妻と結婚し、3人の子どもにも恵まれた。

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 37歳で副社長に就任。翌年には子会社の社長にも就任し、誰もがうらやむようなエリート人生を歩んでいた。

 ところが3年前、子会社に入社してきた平石明子(当時28)と知り合い、不倫関係に陥った。

 明子はあっけらかんとした性格で、上江の妻とは対照的な女性だった。「若いときのヌードを残しておきたいから写真を撮って」と裸体をさらし、局部の接写にも抵抗を示さなかった。

 上江は明子との情事に溺れ、暇を見つけてはホテルで密会し、明子の肉体を味わった。

 ところが1年後、明子に送るはずだったメールを別の社員に誤送信してしまうミスを犯した。そのメールには明子の悩ましい姿の写真が添付されていた。

 会社はその噂でもちきりとなり、明子は好奇の目にさらされることになった。

 だが、上江に妻子がいることを知りながら不倫関係に陥っていた明子に、周囲の批判の目は集中することになり、明子はいたたまれなくなって退社することになった。

 中でも明子に好意を寄せていた男性社員A氏は失望し、「キミは相手に地位や金があれば何でもするのか。まるで売春婦だな」と辛辣な言葉を投げかけた。

 それを機会に上江と明子は一旦は別れた。だが、明子は1カ月もしないうちに上江に電話をかけてきた。

「住民税のお金が払えないので援助して欲しい…」