“エリート生まれ・エリート育ち”の43歳の経営者はなぜ「元社員のストーカー」になってしまったのか…? 経営者の不祥事によって、株価の下落にまで発展した某大手製薬メーカー。いったい何が彼に道を踏み外させたのか? 事件発覚後、彼はどうなったのか? 2010年に起きた事件の顛末をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
ストーカーになったエリート経営者
上江は開き直って、こんなメールを送りつけた。
〈旦那にバレるよ。ハードディスクも見られてしまうし、もう騙し通せないよ〉
〈もう他人を巻き込むのはやめて下さい。二度と電話もしないでください〉
明子との仲がどうにもならないと悟ったとき、上江の中で何かが壊れた。複雑な愛憎感情が入り混じり、2人を別れさせるために付きまとうストーカーとなったのだ。
上江は明子に再三にわたり、〈終わりにするなら終わりにするとちゃんと言ってください〉〈最後は会うと言ったんだから、せめてメールください〉というメールを送ったが、まったく無視された。
プライドを傷つけられた上江はどんどんエスカレートし、〈むやみに中出ししちゃダメよ。誰の子か分からなくなるからね。公衆便所じゃないんだから〉〈アンタの悪事を暴くよ。私とセックスしているテープを会社に送るからね〉などと脅しつけた。
幹也にも開き直って、自分の素性を明かし、明子の局部の写真などを添付し、こんなメールを送りつけた。
〈この写真をネットで公開するよ。お母さんやお兄さんにも送っていいですか。こんな写真をお兄さんに見られて、オカズにされたら嫌だよね〉