それがきっかけでまた2人は会うようになった。社員の目を気にすることもなくなり、今まで以上に大胆になり、週1度はホテルで甘い遊戯を楽しんだ。
〈愛しているからね。ずっと一緒だからね。旅行にも行こうね〉(上江のメール)
だが、そんな関係を2年も続けるうち、明子も年頃になって結婚を考えるようになった。上江が妻と別れる気がないのは分かっていた。上江は良きブレーンであり、ちょっとした贅沢を味わうスポンサーと割り切っていたのである。
ほかの社員に犯行をなすりつけたことも…
明子は新しい会社で、将来の夫となる平石幹也(当時32)と知り合った。上江と付き合いながら、幹也とも肉体関係を持ち、トントン拍子に結婚話が持ち上がった。
その経緯を明子は上江に逐一報告していた。明子は上江にも祝福してもらえると思い込んでいたが、長年慣れ親しんだ女体を若い男に手渡すことに上江は静かな嫉妬心を燃やしていた。「できればそんな男は放逐したい」とまで考え、明子の相談に乗るフリをしながら、新しい男の情報を密かに収集していた。
結婚後、幹也のパソコンにフリーメールでこんなメッセージが届いた。
〈あなたの奥さんは浮気しています。週末に別の男と会っているのをご存じないんですか?〉
幹也は明子に尋ねたが、明子は「イタズラでしょ」と答えるしかなかった。
明子はそのことをさっそく上江に相談した。
「うちの旦那のパソコンに私たちのことをほのめかすようなメールが届いたのよ。こんなことをするなんて、私はAさんしか心当たりがないんだけど」
それを送ったのがまさか上江とは思わず、明子はかつて自分に言い寄っていたA氏の仕業だと思い込んだ。
「そうかもな。あいつしか考えられん。でも、フリーメールじゃ証拠にならないから、まだしばらく様子を見た方がいい」
上江は自分の“犯行”を隠蔽し、うまく罪をなすりつける相手が見つかったとほくそ笑んだ。その後もA氏になりすまし、2人の行動を監視しているかのようなメールを送り続けた。上江の狙いは幹也が妻の浮気に気付き、自分から別れ話を切り出すことだった。
だが、調子に乗ってメールを送るうち、自分と明子しか知らないはずの情報まで書き込んでしまい、明子に疑惑の目を向けられることになった。
「もう二度と会いたくない」
ある日、上江は幹也にメールを送った後、明子から〈至急電話して〉というメールをもらった。上江が電話をかけると、明子は激怒していた。
「今までメールを送っていたのはあなただったのね。信じられない。もう二度と会いたくない。旦那はまだあなたの仕業だとは気付いてないから、あなた自身の手で何とかしてよ!」
一方的に明子に絶縁宣言され、上江はうろたえた。何とか取り繕おうとしたが、上江の卑劣なやり口はどう説明しても正当化できず、明子はますます態度を硬化させるばかりだった。
上江は開き直って、こんなメールを送りつけた。
