大阪・梅田の地下街の待ち合わせスポットとして知られる「泉の広場」。ここで売春をしていた当時17~64歳の女性61人が、売春防止法違反で大阪府警に現行犯逮捕されていた。府警は令和元年から2年にかけて約1年がかりで捜査していたという。
大都会の真ん中で、何が起こっていたのか。『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)、『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)の著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏が現地を歩いた。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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常に「20人ぐらいはいたんじゃないでしょうか」
住宅街の中を、微妙な距離感を保ちながら、歩いて2、3分の場所にあるベンチへと向かった。インタビュー時間は50分。
杏梨(仮名)は今年、30歳になるという。ベンチに来るまでの会話で、待ち合わせをした町工場で働いていることがわかった。
「いつぐらいまで、泉の広場にいたんですか?」
「去年の夏ぐらいまでですね」
そもそも彼女が広場に立つきっかけは何だったのか。
「私は新潟で暮らしていたんですけど、ちょくちょく大阪に遊びに来て、泉の広場を待ち合わせの場所にすることが多かったんです。初めて待ち合わせした時に、いきなりおじさんに、ガン見されて、『遊び行こか?』と誘われたんです。びっくりしましたね。それで、そういう場所なのかな、と思いました。大阪に住むようになって、出会い系の待ち合わせ場所にしたり、立つようになったんです」
「常に何人ぐらいの人が立っていたんですか?」
「20人ぐらいはいたんじゃないでしょうか」
「妖怪」と呼ばれるおばさん4人は、おじさん相手に…
「年齢層も幅広かったみたいですね?」
「そうなんですよ。本当にいろんな人がいましたよ。こんなこと言ったら失礼なんですけど、『妖怪』と呼ばれていたおばさんたちも4人ぐらいいました。彼女たちは缶カラを集めているようなおじさんたちをターゲットにしているんですよ。トイレに行って手でやってあげるそうです。料金は5000円で、おじさんたちが1日働いて稼げるぐらいの料金なんじゃないですかね。妖怪目当てのおじさんたちは多かったですよ」
杏梨によれば、大阪で「泉の広場」といえば、立ちんぼがいることで有名な場所ということもあり、客はすぐに誰が立ちんぼであるか認識して女性に近づき、値段の確認をするだけで、ホテルへと向かったという。女性の方からは目を合わせるぐらいで、声をかけることは無かったという。