「どうやってその子と仲良くなったんですか?」
「泉の広場で立っている時に出会い系もやっていたんですけど、その時に彼女から『仲良くしてください』とメッセージが来たんです。それから、仲良くなって一緒に泉の広場で立ったりしたんです」
出会い系のアプリとは、男と女が出会うものだとばかり思っていたが、同業の女性どうしも仲良くなるものだと知った。ところで、どのように同業の女性は逮捕されたのだろうか。
「警察がアプリを利用していたんです。客を装って近づいてきた。だから私もあなたのことを疑っていたんですよ。話を聞きたいというのは、おかしいですもん。彼女の場合は、1ヶ月ぐらい客のふりをした警察と連絡を取っていました。そこで、売春の事実やお金のやり取りなど証拠を押さえられたんです。彼女には、自分からお金の話をしたらダメだよと言っていたんですけど、あんまり警戒しなかったんですよ。それで、いざ会って、ホテルに入ったところで、逮捕されてしまいました。『全部証拠はあるからな』って言われて、どうしようもないですよね」
「客のおっちゃんはガン見してくる。警察は目線をそらす」
警察はアプリで近づいてくるだけでなく、泉の広場でも張り込みをしていたという。
「すぐに警察の人はわかりますね。客のおっちゃんはガン見してくれるんですけど、警察の人は目が常に動いているんです。きょろきょろ辺りを見回したり、目線をそらして時計を見たり、それでもわからない可能性があるので、絶対にこちらから男の人を誘うことはありませんし、お金の話は口に出しませんでした」
かなりの緊張感を持ちながら、働き続けていたことは伝わってきた。彼女の話を聞いていると、20メートルほど離れた家の陰から、ひとり初老の女性がこちらを凝視していた。
傍から見れば、ノートを手にした中年の男が、若い女性とベンチに座り、質問を投げかけながら必死にメモを取っている。この住宅街では見慣れない光景であり、何事かと思ったのだろう。それこそ、私のことが何かの事件を追いかける刑事にでも見えているのかもしれない。視線を感じながら話を続けた。