大阪・梅田の地下街の待ち合わせスポットとして知られる「泉の広場」。ここで売春をしていた当時17~64歳の女性61人が、売春防止法違反で大阪府警に現行犯逮捕されていた。府警は令和元年から2年にかけて約1年がかりで捜査していたという。
大都会の真ん中で、何が起こっていたのか。『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)、『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)の著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏が現地を歩いた。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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パチンコ店で待ち合わせた2人目の女性
その駅は、西口にパチンコ屋、東口には長さ100メートルほどの商店街のある典型的なベッドタウンだった。彼女が待ち合わせの場所として指定してきたのは、西口のパチンコ店だった。
駅前のロータリーの向こうに鎮座するパチンコ店には、休日ともなると、近隣から客が押し寄せるのだろうか、店舗と同規模の大きな立体駐車場も併設されている。休日に人々が集う様を想像していると、何だかパチンコ店が祈りを失った日本社会のカテドラルのように見えてくる。
おそらく、今回会う女性も待ち合わせ場所に指定してくるほどだから、幾度となくこの店に通っているのではないか。何となく彼女の生活ぶりが見えてきたような気がした。
待ち合わせの時間の午後3時まで、しばし時間があったので、駅前のベンチに腰掛けていると、このご時世には珍しくマスクもしていない初老の男性がふたり、目の前を通り過ぎて行った。
「捕まった人がいたなんて、びっくりしました」
2時50分となり、パチンコ店の前へと移動した。女性を見つけてくれた浅野君(仮名)から彼女の電話番号を教えてもらっていたこともあり、パチンコ店の前にいますとショートメールを打った。すると、私からの連絡を待っていたかのように、パチンコ店に隣接する立体駐車場の陰から、ロングスカートを穿き、ぽっちゃりとした体型の女性が現れた。浅野君からは年齢は30代前半と聞いていたが、頭頂部には白髪も目立ち、もう少し年を重ねているような印象を受けた。
「はじめまして、八木澤と言います。今日はお忙しいところすいません」
「みどり(仮名)です。よろしくお願いします」
と、何となくぎこちない挨拶をして、話を聞くためにカラオケ店へと向かった。パチンコ店から、彼女が行ったことがあるというカラオケ店まで商店街を抜け3分ほど歩いた。