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現場に到着すると臭いに圧倒され、作業終わりには吐息がごみ臭く…想像を上回る“ごみ収集作業員”の“苦労”

『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』より #1

2021/09/25
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 このような紛らわしいモノに関しては筆者もミスをおかしてしまった。それは、飲食店前に出されたごみ袋と使用済みの大量のおしぼりが入った袋を両方ともごみとして収集したミスであった。おしぼりが入った袋がごみと共に置かれていれば、事情を知らなければごみと判断するであろう。しかし、おしぼりは提供業者が回収し消毒して再利用するため、収集してはならないモノであった。横で作業する清掃職員さんに注意されタンクの中に押し込まなくて済んだが、もしそうしていれば弁償させられていたであろう。

尽きることのないごみ収集の苦労

 不燃ごみの収集時に生じる類似した間違いは、不燃ごみとその横に置かれたビニール袋に入れられた出前用の皿を一緒に収集するミスである。可燃ごみの収集ならば皿の入った袋は収集せず残置するが、不燃ごみの収集時にはごみとして認識してしまう。また、不燃ごみの回収の際に、ごみ容器の上に置かれた傘の取り扱いにも困る。容器を傘立てとして利用しているケースもあるため、都度インターホンでごみか否かの確認を行い、収集作業を行う。

 排出者側からすると、戸別収集は家の前にごみを出すため集積所収集に比べ排出の手間は省けるであろうが、何がごみであるかをしっかりと明示しておかなければ、とんだトラブルを引き起こしてしまう。排出者、作業員双方のためにも、戸別収集では排出者側の明確な意思表示がいっそう求められる。

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 ところで、作業日当日は祝日であったため通行人はそれほど多くなかったが、平日であると付近の高校生の自転車の往来が多く、収集には大変苦労すると清掃職員さんから教えて頂いた。気がつくと目の前に自転車が現れているという状況になるのである。実際に多少でも通行人が近づいてくると、積み込み作業にはかなりの注意を払う必要が生じた。特に各住宅の前のごみを収集して清掃車のバケットに投入していくという一連の動作の僅かな間に、自分と清掃車の間に通行人や自転車が入ってしまう場合もある。状況によってはごみをバケットに投げ入れる時もあるが、それが当たってしまう可能性もある。また、小特の回転板を回してタンクに押し込んでいく時に通行人が清掃車に近づいてくると、水気のあるごみから汁が飛んでしまう場合もあるため、いったん作業を止めて通り過ぎるまで待ち、その後作業を再開していかざるを得ない。特に清掃車1台しか通行できないような道路で作業が止まると、後ろで待たせている車にはさらに待ち時間が生じてしまう。誰でも急がなければならない時もあると思うが、収集作業時には無理な通行を控えた方が良い。利己的な行動が周りの通行人にも影響を及ぼす。このことへの理解の深まりを祈るのみである。