昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

現場に到着すると臭いに圧倒され、作業終わりには吐息がごみ臭く…想像を上回る“ごみ収集作業員”の“苦労”

『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』より #1

2021/09/25

 ゴミを収集する人、排出する人。誰にとっても必要不可欠な“清掃事業”への理解を深めようと、大東文化大学法学部で准教授を務める藤井誠一郎氏は清掃業に従事した。実際の現場で働いた彼が目にしたものとは……。

 ここでは同氏の著書『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。コロナ禍の東京都北区で体験した清掃労働の実情を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

©iStock.com

◆◆◆

戸別収集の作業現場

 次に現場でどのように作業が行われているかを述べてみたい。筆者が体験した様々な収集の現場で何が起きているのかを述べていく。なお、筆者は東京都北区の滝野川庁舎にて収集体験をさせて頂いた。

 筆者が北区の清掃現場に興味を抱いたのは、東京23区という大都市地域ではかなりのコストがかかってしまう戸別収集がどのように実践されているかに興味を持ち、自らの身で以てその実態を知りたく思ったからである。2019年2月に品川区での戸別収集の様子を横で見学させて頂いたことはあるが、自らが作業するところまでは許可が下りなかった。今回は北区の収集現場で実際に作業を体験させてもらえるようになり、十分に業務を理解できる機会となった。

 戸別収集が基本となる滝野川庁舎での初めての収集体験は、路地奥からの引っ張り出しも多く含まれる滝野川5丁目のコースであった。道幅が狭いところもあるため、小特に乗務しての収集作業であった。腰痛予防体操を終え滝野川庁舎の裏庭に停めてある清掃車に乗り込み、10分程度で滝野川地区に到着し作業が始まっていった。

 先述のとおり午前中の作業では3台分の収集を行うが、1台目の収集はそれほど道幅が広くない一方通行道路沿いの収集であった。道に沿って動く清掃車に合わせ、各住宅の前に出されたごみを収集し清掃車のバケットに投げ入れる作業を繰り返していく。家の前に出されたごみを収集するのであるが、見えにくい場所に出されている場合もあるため、取り残しをせぬようにしっかりと指差し確認を行いながら収集作業を進めていく。

 集積所収集では、現場に到着するとごみの臭いに圧倒され、一日の作業の終わりには吐息がごみ臭くなることもあったが、戸別収集ではごみが分散されているため、それほど臭いもしない。また、マスクを着用しているため、なおさら臭いを感じない。しかし、良い面があれば辛い面もあり、集積所収集ならば作業が終われば清掃車に乗り次の集積所に移動するため多少の休憩時間を確保できるのに対し、戸別収集の場合は外に出て清掃車を小走りで追いかけるように作業が行われるため、より労力がかかり収集時間も長くなる。よって、1日5台分の作業しかできない(*1)。これはすなわち、戸別収集にはそれだけ時間、機材、人員、労力が必要になることを意味している。

*1 集積所収集となる王子庁舎では北工が近いことから、1日7台分の作業が割り当てられている。