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「だまって もってけ 糞ゴミ屋」いまだ根強く残る“清掃業従事者”に対する“差別”“侮辱”のリアル

『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』より #2

2021/09/25
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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、政府から発令された緊急事態宣言。以降、巣ごもり生活をする人が増加し、その結果、大量の家庭ごみが日々排出されるようになった。そうした状況もあり、エッセンシャル・ワーカーと称されるごみ収集に従事する人々への関心も一時集まった。しかし、かつては清掃事業者には心無い言葉が投げかけられることも決して珍しくなかったという。

 ここでは、大東文化大学法学部准教授の藤井誠一郎氏による『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』(朝日新聞出版)の一部を抜粋。清掃従事者が実際に浴びせられてきた言葉を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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ごみ袋に貼付された感謝のメッセージ

 2020年4月28日の小泉進次郎環境相の記者会見や、清掃職員が収集現場で奮闘する様子が報道されるにつれ、ごみ袋に貼付される感謝のメッセージやメモが全国的な動きとなっていった。貼付されたメッセージ等はかなりの数に及んだ。中には作業の流れで大量のごみとともに清掃車に積み込まれたケースもあるため、実際には感謝のメッセージやメモは清掃事務所が把握している数よりも多いと推察される。一方で、清掃従事者にとってはメッセージやメモを受け取るのは確かに大変有難く喜ばしいのであるが、清掃事務所への報告のため収集作業を中断して大切に保管する手順が伴った。よって、在宅勤務や家での食事が多くなったことでごみの量が正月と同程度になり積込量が増えていた状況において一度に複数のメッセージやメモが出てくると、手間がかかり仕事量が増える状況でもあった。ごみに貼付された住民からのメッセージやメモは、便箋をはじめとして、コピー用紙、小さなメモ用紙、付箋、古紙の裏紙等、様々であった(*1)。メッセージには感謝と激励が述べられており、一例を示すと、「私たち住民のためにお仕事をして下さり本当にありがとうございます。くれぐれもお気をつけてお仕事をされて下さい」「コロナウイルスへの感染の危機にさらされながらも、いつもと同じごみ収集作業。そのご苦労のおかげで毎日清潔な生活をおくることができます。ありがとうございます」と述べられていた。数行程度のメッセージやメモが多数を占めたが、中にはかなり達筆で便箋にびっしりと感謝の意を伝えた手紙もあれば、子どもが書いた数行のメッセージもあった。このようなテキストのメッセージのみならず、清掃車や作業員を描いた絵もあり、中にはパソコンを利用して表彰状のように仕上げてカラー印刷した「感謝状」を作成してごみに貼り付けた事例もあった。

*1 東京清掃労働組合が保有する2020年4月・5月の「区民からの感謝のメッセージ」の資料を参照