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現場に到着すると臭いに圧倒され、作業終わりには吐息がごみ臭く…想像を上回る“ごみ収集作業員”の“苦労”

『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』より #1

2021/09/25
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路地奥からの引っ張り出し

 1台目の収集が終わると、清掃車は収集したごみを搬入しに豊島清掃工場に向かうが、作業員は現場に残り、次の積込作業に向けて路地奥から清掃車が停まる道路脇までごみの引っ張り出しを行っていく。これは清掃車が辛うじて1台通行できる道路での収集作業時間を限りなく短縮するためであり、あらかじめ路地奥からごみを引っ張り出して道路沿いにまとめて仮置きし、それを積むことで人々の往来を妨げる時間をなるべく減少させるという配慮による。このごみの引っ張り出しや仮置きは戸別収集に反するため、あらかじめ路地奥の住居の住民に説明を行い、許可を頂いてから行うという配慮を施している。

 清掃職員は通りに面した狭小路地に入っていき、路地奥からごみを引っ張り出してくる。路地にはびっしりと住居が建てられており、中には単身者が入居するようなアパートもある。路地の奥にはさらに枝分かれしている箇所もあり、地図が頭に入っていないと収集業務が遂行できないため、地域を熟知していなければ仕事にならない。

 路地奥まではある程度の距離があり、中には20m、30mに及ぶ箇所もある。その路地を何往復もするのを避けるため、持てるだけのごみを運び出していく。その際には、ごみを持つというよりも袋の結び目を指に引っかけ、可能な限りのごみを一度に引っ張り出す。その時に、袋いっぱいにごみが詰まり結び目が極端に小さいごみは、指に引っかけにくく持ち出すのに苦労する。また2020年7月1日からのレジ袋の有料化に伴い、レジ袋ではないビニール袋や紙袋をテープで留めて排出しているケースもあり、指に引っかけられないごみもある。また、単身者が入居するアパートのストッカーには、小口のごみが排出されており、それをストッカーの奥底から取り出す作業は身を乗り入れて行うため苦労する。さらにそれらを道路まで引っ張り出す作業は、一度に多くを持てないため作業員泣かせとなる。

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 引っ張り出すごみの中には45Lの袋に山盛りに詰まったごみもあるため、かなりの負担が指にかかる。筆者は一度に4つしか持ち運べなかったが、清掃職員の方は10個近いごみを一度に運び出しており、素人がすぐに真似のできるような作業でないと痛感した。現場で足を引っ張ってはいけないと思い、45Lの大袋を小指に引っかけて持ってみたが、小指が折れそうな痛みを感じすぐに断念した。一度に多くを持とうとすると怪我が生じる現場だと痛感した。当該作業後の数日間は指の関節が痛く、指が真っすぐになりにくかった。清掃職員の中には指が曲がってしまい真っすぐに伸びない方もおられると聞いた。路地奥からの引っ張り出しにはかなりの負荷がかかると身を以て理解できた。

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