ケヴィン・スペイシーのセクハラも暴露された
ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題は、いまだニュースを賑わす大事となりました。つい最近もワインスタインが元スパイや軍人まで雇い、訴え出そうな被害者の名前を事前に知ろうと工作していたのが発覚。この事件は性質上、被害者が恥の意識から泣き寝入りするだけでなく、金や名声のある人物の前では、立場の弱い女性に対する性的犯罪が軽視される傾向を示していました。しかしワインスタインの恐れていた通り、複数の証言によって彼の蛮行は認識されるようになり、被害者の集団の声はさらに広がって、今は他の有名人によるセクハラも暴露されつつあります。
名優として知られるケヴィン・スペイシー。彼からのセクハラを明らかにしたのは、俳優のアンソニー・ラップです。30年ほど前の彼がまだ14歳のとき、ブロードウェイで子役をしていた際に、他の舞台に立っていたスペイシーのパーティーに招かれて、その夜に性的誘惑を受けたとのこと。ラップは浴室に立てこもり逃げ切りましたが、その出来事を当時は親にも打ち明けられなかったと言います。このインタビュー記事を受けて、ケヴィン・スペイシーは謝罪の声明を出しましたが、文章の後半部分がすぐさま批判を受けました。
「(セクハラ告発の)この話はわたしが自分の人生の色々なことに対処する勇気をくれた。プライベートを秘密にしていたため、噂が助長されていったのは理解している。わたしはこれまでの人生で男性たちとロマンティックな出会いをし、愛してきた。いまわたしはゲイの男性として生きることを選ぶ」
同性愛者のカミングアウトに問題をすり替えた
この文章は未成年者への性行為の強要を、同性愛者だというカミングアウトに問題をすり替えていると指摘されています。それも被害者の告白が「カミングアウトの勇気を与えてくれた」とは、デリカシーの欠如にめまいがしますね。当たり前ですが、異性愛者でも同性愛者でも、未成年を性行為に誘ってはダメです。14歳で舞台に出ている少年の社会性や背伸びする気持ちは、他の子より大人びて見えるかもしれませんが、大人ほどは世間を知らず危うい時期です。ラップは家庭の事情やブロードウェイという文化環境によって、保護者なしに一人で行動することもあったようですが、それでも大人は酒が出るパーティーの場に子どもを誘ってはいけないし、もし子どもが行きたがっても、大人たちが参加を許してはいけません。
スペイシーはドラマのスタッフたちや舞台関係者、そしてリチャード・ドレイファスの息子で俳優のハリー・ドレイファスなどからも、過去のセクハラを告発されています。望まない性的接触は、とてもショックで心的外傷を残す出来事ですが、さらに問題なのはパワハラともセットになっていること。スペイシーが看板のドラマや舞台では、被害者のスタッフの方が立場は弱く、もしセクハラを強く訴え出たら「厄介な人」と思われて干されるのでは……と、不安が湧くのは想像に易いでしょう。セクハラする側は、当然その立場の強みを認識していると思います。ハリー・ドレイファスも父親が同席し、3人で舞台の本読みをしている時に、脚を際どい所まで触られたと告白しました。これもスペイシーが座長の芝居でドレイファス親子は雇われた側だったこと、まさか父親がいるところで同性から痴漢をされるとは思っていなかったことなど、被害者の弱い立場や驚きによる反応の遅れ、恥の意識などに付け込むパワハラとセクハラがセットの悪辣な行為です。