女性による政治色の強い映画はアカデミー賞から嫌われた
この秋から、ジェシカ・チャステインの主演作2本が公開となります。10月20日封切の『女神の見えざる手』(16年)と、12月15日からの『ユダヤ人を救った動物園 ~アントニーナが愛した命~』(17年)。11月には『ユダヤ人を救った動物園』のプロモーションで初来日もします。
ジェシカ・チャステインは、オサマ・ビンラディンを追跡するCIA分析官を演じた主演作『ゼロ・ダーク・サーティ』(12年)で、いわゆる「女だてらに」と言われるような強靭さを持つキャラをこなしました。監督は男社会である映画業界で、性別を超えた骨太な映画を撮り続けてきた女性監督キャスリン・ビグロー。非常に力作でしたが、ビグローは監督賞ノミネートすらなく、他も作品賞とチャステインの主演女優賞ノミネートどまりで、受賞は音響賞のみ。女性たちによる政治色の強い映画は、男性会員が8割近くを占めるアカデミー賞からは嫌われた印象が残りました。
いま日本で公開中の『女神の見えざる手』では、さらにチャステインの弁舌に磨きがかかり、「男顔負け」どころじゃないレベルの、稀有な切れ者ぶりが光ります。チャステイン演じるエリザベス・スローンは、彼女が味方につくと政策の勝率が格段に高くなると言われる花形ロビイスト。そんな彼女に、銃規制反対派である裕福な初老男性が「女性は銃を嫌うが、いま銃規制反対を通すには女性の支持が必要」として、協力を求めてきます。しかし一笑に付して依頼を断るスローン。とはいえ彼女も会社に雇われる身であり、全米ライフル協会からの高額なギャランティは逃せないと、上司は彼女に引き受けるよう絶対命令を出します。それでもスローンは従うことを断固拒否し、その場で会社を辞めて、銃規制派に付くところから話が始まります。