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駒澤大の「原点と責任」と東洋大の「酒井監督」が今年もかっこよかった――出雲駅伝「TVに映らなかった名場面」後編

駒澤大の「原点と責任」と東洋大の「酒井監督」が今年もかっこよかった――出雲駅伝「TVに映らなかった名場面」後編

2021/10/16
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【6】西山喜久恵アナのがんばりと三浦龍司の不在

 出雲駅伝の中継はフジテレビ。選手や監督へのインタビューを主に行なっているのは西山喜久恵アナです。

 ものすごく勉強熱心な西山アナ。大会後に見かけると、バッグがパンパンになるほど資料を持ってきていたのですが「ほとんど話せませんでした」と残念そう。

西山アナ。肩には資料でパンパンのバッグ

 出雲駅伝は放送時間が短くて、いくら情報収集をしても、もったいないことにほとんど使われず、バタバタのまま放送が終了してしまう。今回も東京国際大のすべての選手に優勝インタビューする予定が放送時間が足りないと察するやいなや、本当は最後に聞くはずだった大志田監督へのインタビューに切り替えるとっさの機転に拍手でありました。

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 西山アナの資料の出番が少なかったのにはもうひとつ理由があるでしょう。それは順天堂大学の三浦龍司選手が出走しなかったこと。

 2年ぶりの出雲駅伝ですから、フジテレビは盛り上げるために地元・島根推しの布陣を組みました。まず、テーマソングを島根出身のヒゲダン(Official髭男dism)に一新。さらに島根出身で東京五輪3000m障害で7位入賞を果たした三浦龍司選手の凱旋です。

 フジテレビはヒゲダンのテーマ曲を三浦選手に聞いてもらうVTRを作ったほど力を入れていましたし、地元メディアも、たくさん集まりました。ところが三浦選手は出場しなかった。島根推しを狙ったフジテレビの目論見は外れてしまいます。

 三浦選手がエントリーを外れたのは、あまり調子が上がっていなかったのが理由だったようです。ただ、これまでなら多少調子が悪くても、ここまで外堀を埋められたら「とにかく出てくれ」と強行出場せざるを得ない雰囲気に追い込まれたはず。

 ところが順天堂は三浦選手を完全に休ませました。順天堂はテレビ局ファーストではなく当然のように選手ファーストの選択をした。新しい時代を予感させる出来事になりました。素晴らしい判断だと思います。そうなのです。わたしたちファンは三浦選手がただ出てればいいわけではないのです。最高の三浦選手が見たいのです。ですから、じっくり身体を休めてほしいところです。まだ大学2年生ですから。

 ただ、西山アナはパンパンの資料が無駄になってしまったのが残念ですが(笑)。