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内田樹と武田砂鉄が語る「SNSで人を攻撃することの“間尺の合わなさ”」

内田樹×武田砂鉄 その1

source : ライフスタイル出版

genre : ニュース, 読書, メディア, 政治, 社会, ライフスタイル

note

公人に対する批判は個人を攻撃しているわけではない

内田 公人に対しては尖ってもいいと思うんです。何もその人の個人的な人格を攻撃しているわけではなくて、その人のオフィシャルな言動に対する批判ですから。その人がまとっている「鎧兜」に向けての批判なんですから、それはやっても構わないと思います。

©️iStock.com

武田 それは僕も常々思っていることで、公人に対する言葉と、私人に対する言葉を冷静に使い分ければいいだけの話です。それを混在させて「文句はよくない」とすると、公人の逃げ道が増えるだけです。でも、たとえば安倍晋三元首相に批判を向けると、「いや、いつまでも安倍さんがかわいそうだよ」「ご病気で辞められたのに、そんなこと言うもんじゃない。まずは感謝でしょう」などという声が出てくる。公人と私人に向けられる言葉の違いさえわからない人が増えていますよね。メディアも、自分たちが批判されるのを怖がり、公人への指摘を緩めてしまう。

内田 公人自身がおのれの職務についての批判を自分個人に対する人格攻撃と捉えて、感情的に反応するからだと思います。でも、本来公人というのは私的感情を前面に出すべきではないんです。その地位が求めている公的な言葉づかいやふるまい方のうちにとどまるべきなんです。こちらは別に公人の内面になんか用事はないんですから。公的に何を言うか、何をするかだけが問題なんです。

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 公人というのは私人としての内面と公的な言動との間に齟齬があって当然なんです。心にも思ってもいないことでも、立場上言わざるを得ないときは言う。やりたくないことでも、立場上しなければいけないなら、やる。「やせ我慢」ができることこそ公人に必須の条件だと思います。

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