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『逃げ恥』だけじゃない…乃木坂46の躍進の影にあった「逃げたい」「傷つきたくない」という“需要”

『女の子の謎を解く』#2

2021/12/16
note

どこか安心できるところで居場所を見つけたい

 うまく恋愛市場に乗っかれない、うまく就職市場に乗っかれないふたりが邂かい逅こ うし、知恵と工夫をもって居場所をつくっていく「逃げ恥」。普通に生きてたら人とうまく関われないが、コンビニという決まったオペレーションに守られた空間ならばちゃんと居場所を見つけることができる『コンビニ人間』。

 どちらも、「自由に競争しろといわれたらうまく乗り越せない人々が、あえて自由な市場から逃げることで、自分の居場所を見つける物語」である。

乃木坂46 2018年撮影 ©文藝春秋

 だから平匡はアプリで恋人を見つけないし、みくりは普通の就活だったらなかなか職を見つけられないし、古倉はコンビニを「はじめて人間として誕生した」空間だと感じる。同じように、乃木坂46のメンバーもまた、殺伐とした元の場所から逃げて、乃木坂46という居場所を見つける。そしてファンもまた、少女たちが仲の良いユートピアのような空間を、乃木坂46に見出す。

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 自由に競争しろって言われるこの市場から、逃げたい。そしてどこか安心できるところで居場所を見つけたい。――そんな私たちの欲望が、「逃げ恥」を、『コンビニ人間』を、そして乃木坂46を、発見せしめたのではないだろうか。

女の子の謎を解く

三宅香帆

笠間書院

2021年11月22日 発売

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

『逃げ恥』だけじゃない…乃木坂46の躍進の影にあった「逃げたい」「傷つきたくない」という“需要”

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