靖国神社参拝の批判に飽きたのは日本人だけではないようだ。悪い意味で。中国メディアは今度は日清日露戦争の英雄、乃木希典を祀る乃木神社にまで難癖を付け始めた。その矛先には名前に「乃木」とつく人気アイドルグループの「乃木坂46」まで。きっかけは中国人スターのSNSだったというが、そこには日本文化と中国人との微妙な距離感も見え隠れする。
《警告! 日本には戦争犯罪者を祀る神社が他にもある》
と題した記事が中国語の国際ニュース系メディア「環球時報」に掲載されたのは8月末のこと。記事は、中国人俳優、張哲瀚(チャン・ジァハン)が乃木神社で友人の結婚式に参加したことをSNSに上げたことが中国で大批判を巻き起こしたことに触れただけでなく、中国で批判を呼びかねない中国人にとっての「地雷スポット」が日本国内に多数あると悪意に満ちた観光スポットの紹介を連ねた。
張は2019年、乃木神社で行われた友人の結婚式に出席。さらにその前には靖国神社でも写真撮影していたことが最近になって中国のSNSで話題になり、張は「これまでの不適切な行動を深く謝罪します」と謝罪に追い込まれ、「微博」(ウェイボー)などのSNSアカウントも停止された。
張のコメントには「私は親日ではありません。中国人です!」とする文言もあり、中国では「親日」と「中国人」が定義として両立できない状況なのだと見て取れる。
そもそも乃木は第二次世界大戦には参加しておらず、戦争犯罪者として裁きの場に出たことすらない。その乃木を非難するなかで思わぬ火の粉が飛んできたのが、アイドルグループ「乃木坂46」だった。
名前が「乃木坂」というだけでバッシング対象に
乃木坂46はAKB48の「ライバル」として2011年、AKBも手がけた秋元康がプロデュースして結成された10~20代の女性からなるアイドルグループだ。
いまや「AKBのライバル」というよりグループとしての個性も確立して独り立ちし、中国のSNSでもフォロワーが300万人以上いる人気グループだが、ここに張を批判する記事で環球時報が突っ込みを入れた。
《乃木坂46のグループ名も乃木に関連することは言及する価値がある。日本人は毎年元旦に参拝して祝福する伝統があり、乃木坂46の初詣と成人式は乃木神社で毎年行われている》
たしかにグループ名に「乃木」は含むが、名前の直接の由来は、メンバーの選抜が行われたビルが「SME乃木坂ビル」だったというだけだ。乃木坂自体は乃木神社に面することから乃木坂と名付けられたが、明治の初めは「幽霊坂」という名前。初詣や成人式を近くの神社で祝うことは極めて自然なことだろう。