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「60歳を過ぎてヴェルサーチとかバリッと着ていたら、何かやってくれそうな気がするやろ」《野村克也をしのぶ会》で新庄剛志ビッグボスが“明るいグレー”のジャケットを着た“真意”

2021/12/23

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ, 社会, 読書

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克則から新庄が譲り受けたジャケット

「ようやく日本代表の大会(WBACプレミア12)が終わって、北海道の自宅に戻ったばかりなんです。こちらでの仕事や用事も予定が立て込んでいて、今回は東京に行けそうもありません。でも、東京オリンピック前に監督とお会いしたいなあ……」

 そんな稲葉のため、年明けの2020年2月頃、野村と稲葉の食事会を設定すると約束し、電話を切った。その2月、野村は逝ってしまった――。

 その稲葉がGMとなった日本ハムで新たに監督になった新庄剛志監督も、阪神時代の教え子である。派手な見た目や言動だが、野村に対する誠実な感謝の念は本物である。喪を表わす黒のスーツ姿の出席者の中で、新庄の明るいグレーのジャケットが人目を引いた。これは、野村の愛用していたブランド、ヴェルサーチの一着だった。

 息子の克則に頼んで、体格がまったく異なるジャケットを譲り受け、仕立て直しをして、この日のためにまとった。

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写真:著者提供

「60歳を過ぎて地味な服を着ていたら、地味な仕事しかできん。ヴェルサーチとかバリッと着ていたら、端から見ても、何かやってくれそうな気がするやろ」

 恩師がほくそ笑みながら着ていた服を、恩師をしのぶ場で披露する。これが、新庄流の愛情表現だった。

〈これからも野村とともにいる〉

〈マスコミを味方につけて発信する〉

2つのメッセージを、新庄はファンに伝えた。

「人生の中で何を残したのか。それによって、その人の価値というものが決まる。ワシはそう思っている。財産、仕事、人があるとしたら、やっぱり大切なのは、人だろう。ワシは何を残したんやろな」

 野村チルドレンは、それぞれの思いと方法で、いまも野村克也と向き合っている。まさに、野村は人を遺した。

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遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと

飯田 絵美

文藝春秋

2021年6月28日 発売

「60歳を過ぎてヴェルサーチとかバリッと着ていたら、何かやってくれそうな気がするやろ」《野村克也をしのぶ会》で新庄剛志ビッグボスが“明るいグレー”のジャケットを着た“真意”

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