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《フジに出るなら紅白は辞退してもらうとNHKが…》伝説の紅白“裏番組”「世界紅白歌合戦」が本家打倒で狙ったマイケル・ジャクソン出演交渉の“全内幕”

《フジに出るなら紅白は辞退してもらうとNHKが…》伝説の紅白“裏番組”「世界紅白歌合戦」が本家打倒で狙ったマイケル・ジャクソン出演交渉の“全内幕”

紅白歌合戦「裏番組」を巡る・疋田拓氏インタビュー#2

2021/12/30
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 疋田氏の目論見通り、『世界紅白』は日本のアーティストが羽ばたくキッカケとなった。それでも、番組は2年で幕を閉じる。視聴率は1985年4.8%、1986年3.4%と振るわなかった。

「お金も掛かっただろうしね。やってみないとわかんないけど、視聴率で紅白に勝てるはずがない。ただ、それよりも何よりも、新しい形を作りたかったんです。話題を集めただけでも、大変なことだと思いますよ。(翌年6月の)異動がなければ、まだやっていたかもしれません」

『世界紅白歌合戦』の台本表紙。ジャネット・ジャクソンのサインがある ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

「時代がね、普通な番組にしてるんじゃないですかね?」 

 現在のテレビ界は製作費も年々削減され、『世界紅白』のような豪華な番組は見られなくなっている。しかし、作り手の情熱や工夫次第で熱量の高いコンテンツはまだまだ量産できるはずだ。

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「時代がね、普通な番組にしてるんじゃないですかね? 目立っている人がいれば、SNSなどで叩くから、作り手も安全に普通にと考えるのかもしれない。ただ、生意気な言い方になってしまいますけど、今はアーティストに仕切られているように見えます。構想があっても、製作者は遠慮しているのかなと。僕は『ヒットスタジオ』で事務所や歌手に何か言われたら、『もう出なくていいよ』って答えていました。それぐらいの覚悟じゃないと、自分の考えは実現できませんよ。番組に魅力があれば、アーティストも乗ってくれる。逆に、そういう製作者を望んでいるんじゃないですかね? 本物は特にそうだと思いますよ」

疋田氏 ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 近視眼的に数字だけを見て、『世界紅白』に失敗の烙印は押せない。安全策を取るのではなく、未開拓の分野への挑戦を試みたことで、歌手や本家に多大な影響を与えた歴史に残る“紅白の裏番組”だった。

疋田拓(ひきた・たく) 1942年8月10日生まれ、宮崎県出身。日本大学芸術学部卒業後、NHKに契約社員として入局。68年11月、フジテレビ入社。『夜のヒットスタジオ』『オールスター紅白水泳大会』『スターどっきり㊙報告』『FNS歌謡祭』など看板番組のプロデューサーを務めた。現在、番組制作会社「プロデュース&ディレクション」の代表取締役。演出を手掛ける『人生、歌がある』(BS朝日)は2022年1月1日18時から5時間放送。五木ひろし、郷ひろみ、田原俊彦、氷川きよし、ももいろクローバーZ、由紀さおり、伍代夏子、坂本冬美、細川たかし、千昌夫、天童よしみ、菅原洋一など50組が登場する。2021年には文化庁長官表彰を受けた。

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