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〈デビュー25周年〉「鈴さんの活躍を書いた時、吉永小百合さんを頭の片隅に置いていた」 吉田修一が『ミス・サンシャイン』で書いた“長崎の原爆”のこと

吉田修一さんインタビュー#1

2022/01/31

source : 別冊文藝春秋

genre : エンタメ, 読書, 映画, 歴史

note

吉永小百合さんの存在は大きかった

――ハリウッドに渡ってからの和楽京子は、「ミス・サンシャイン」と呼ばれて人気を博します。アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされるってすごくないですか。しかも一緒にノミネートされたのがキャサリン・ヘプバーンやイングリッド・バーグマンだという。

吉田 当時の日本とアメリカの歪んだ関係を書かなければならないと思ったので、鈴さんにはハリウッドに行ってもらいました。過去には鈴さんとほぼ同じ世代の、ナンシー梅木(うめき)さんがアカデミー賞助演女優賞を獲っているので、まったくありえない話でもないですし。

 

吉田 コロナ禍の前に、ロサンゼルスにも取材に行きました。ハリウッドのスタジオや、ハリウッド女優さんが住んでいる家を見せていただいたりして。ナンシー梅木さんのお知り合いに話をうかがえたのもありがたかったです。

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吉田 そのほかにも、和楽京子を書くために、いろいろな女優さんの作品を観たり調べたりしましたが、やはり吉永小百合さんの存在は大きかったです。吉永さんは僕が中学生の頃、『夢千代日記』というドラマで、原爆症で亡くなる芸者さんを演じられていたんです。ドラマで原爆のリアルな実態を見て、改めてぞわーっとした記憶があります。

 吉永さんはその後も被爆者の詩を朗読されていたりして、そういう方から、今回、本の帯にコメントをいただけたのは本当に嬉しかったですね。コメントの中で、鈴さんの「彼女は亡くなり、私は生きた」という台詞を引用してくださったのもありがたくて。そのままモデルにしたわけではないですけれど、鈴さんの大女優としての活躍を書いていた時は、吉永さんの立ち居振る舞いを頭の片隅に置いていましたし。

(取材・構成:瀧井朝世、撮影:深野未季/文藝春秋、初出:別冊文藝春秋2022年3月号)

ミス・サンシャイン

吉田 修一

文藝春秋

2022年1月7日 発売

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