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「認知症と決めつけられ、牢屋のような保護室に2日間監禁」「“薬漬け”で歩行困難に」告発者が訴える《壮絶な“誤認入院”の実態》

「認知症と決めつけられ、牢屋のような保護室に2日間監禁」「“薬漬け”で歩行困難に」告発者が訴える《壮絶な“誤認入院”の実態》

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 A子さんも、当時の夫の様子に異変を感じていた。

電話口の夫に感じた異変「ろれつが回らず…」

「電話口でろれつが回ってないなと感じました。よだれも出ているというし、失禁のことも聞いて、これは大変なことになってしまう、と。私は精神科でナースとして働いていましたし、次男は現在も精神科で働いているんです。

 だから、私と次男の2人で宇都宮病院に対して實さんには認知症の症状はなかったことや、お酒を飲んで暴れたりなんてしなかったこと、そして長男との揉め事について説明して、退院させてほしいとお願いしたんですね。でも、取り付く島もなくって。入院させた長男の承諾がないと退院させられないと言われて、ああやっぱりそうゆうことだったんだって……」

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インタビューに応じた江口さんの妻A子さん

 訴状によると、処方されていたのは向精神薬のリボトリールとロナセンで、高齢者には慎重に投与されるべき薬だとされている。依存症をはじめ数多くの深刻な副作用を伴うことでも知られているという。また、分量は通常処方される量よりも多かったことから、江口さんにさまざまな副作用が出た可能性が高いという。

 2019年1月16日頃、A子さんは長男にこう伝えた。

「『退院手続きをして。失禁もしてるしもう限界だよ』と。もしあなたが手続きしなければ強行的にでも退院させると伝えたんです。それでやっと長男が退院手続きをしました」

 その翌日、江口さんは退院することができた。A子さんによると、江口さんは1カ月超の入院で、10キロほど痩せていたという。

長男夫婦の言い分だけを信じて“薬漬け”に

「後で分かったことなのですが、長男は2018年10月頃に宇都宮病院を訪れ、父親である私を入院させてほしいと伝えているんです。私がかなり長男夫婦と揉めていたころです。そして宇都宮病院は一方の言い分だけを信じて、私を無理やり入院させて、薬漬けにしたんです。

 3年が経った今でも、宇都宮病院は許せない。本人の意思を確認しない手続きや診察、患者を威圧するような医師の態度は病院にはあるまじき振る舞いですよ! 今でも突然連れ去られるのではないかと、怖くなる時があります」

宇都宮病院 ©文藝春秋

 

 誤認逮捕ならぬ“誤認入院”だと主張する江口さん。ある日無理やり連れ去られて入院させられた経験はトラウマになっているという。

 江口さんの主張が正しいのであれば、患者の人権を無視した由々しき事態だ。

 医療制度について定める医療法にはこう記載がある。

《第一条の二 医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。》

 果たして、宇都宮病院は医療を受ける江口さんとの信頼関係を築いていたといえるのか。宇都宮病院について周辺取材を進めると、恐ろしすぎる驚愕の事実が判明したのだ――。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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