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「メダルをもらうのは、氷上でいちばん楽しそうなチーム」3度の五輪を経験した本橋麻里が語る“北京の戦い方”

ロコ・ソラーレ代表理事 本橋麻里インタビュー #2

2022/02/10
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北京五輪は「終着駅」ではない

――北京に向かうチーム・ロコにメッセージを送るとすれば、どんなことでしょうか?

本橋 ここがラストと思わないでほしい、ですね。

――詳しく聞かせてください。

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本橋 今回の北京五輪には、ベテラン勢であったり、レジェンドクラスの選手がまた大舞台に戻ってきたり、若手が挑戦したりと、なんていうか人間臭い場所だなと感じるんです。

「五輪は素晴らしいステージだけど、それだけに振り回されてほしくはないですね」 ©️佐藤亘/文藝春秋

――例えば、日本と第2戦で対戦するカナダのジェニファー・ジョーンズ選手は8年ぶりの五輪となります。

本橋 はい、JJ選手のカムバックもそうですし、イギリスのイヴ・ミュアヘッド選手は4回連続4度目の出場、平昌で金メダルに輝いたスウェーデンのハッセルバーグ選手は結婚、出産を経て最短の4年で五輪に帰ってきました。すべての選手がまたこの舞台に立つ理由があって、それぞれの物語が存在するんだろうな。頑張ってきたご褒美を今からもらうんだろうな。

 そう思うとロコのみんなの人生がこれからどう進むかは分からないけれど、ここが終着駅ではないと感じるんです。そんなことを心の隅に置きながら、とにかくゲームを楽しんで無事に帰ってきてほしいですね。

「これがロコ・ソラーレ!」というゲームに期待

――最後に定番の質問で恐縮ですが、どんな色のメダルが欲しいですか。

本橋 あー、それですね。でも本当にそれについては1ミリの嘘もなく、欲してないんです。私は、ロコ・ソラーレは約2時間半、試合時間内でたっぷり遊んでしっかり楽しむことができたら最強のチームだと思っています。

平昌五輪では銅メダルを獲得した。日本カーリング史上初の快挙だった ©JMPA

――たっぷり遊ぶという表現は、いかにもロコ・ソラーレっぽいですよね。

本橋 少し緊張したり、無難に安全策を選んだり、もちろん局面によってはそれも必要なんですけれど、それよりも私は2時間半、遊び心をいっぱい抱えて挑戦してほしい。そうしたらメダルの色に関しては、ひょっとして彼女たち自身で選べるんじゃないかなとも思うんです。メダルはもらうものというより、選ぶもの。過去3回出させてもらった五輪で、多くのチームが教えてくれました。

 いつだってメダルをもらうのは、アイスの外ではリラックスして過ごして、氷上ではいちばん楽しそうだったチームでした。平昌で言えばスウェーデン代表がいちばん楽しそうでいちばん強かった。ロコもそうあって欲しいです。決してカッコ良くなくてもいいし、ミスが出たら「あちゃっ」と表情に出てもいい。「これがロコ・ソラーレ!」というゲームを楽しみにしています。

本橋麻里(もとはし・まり)

 

 1986年6月10日北海道北見市常呂町生まれ。12歳でカーリングをはじめ、19歳でチーム青森に加入。2006年トリノ五輪、2010年バンクーバー五輪に出場。2010年に「ロコ・ソラーレ」を結成し、結婚、出産を経て2018年に平昌五輪に出場し、日本カーリング史上初のメダルを獲得した。

 

 現在は2児の母でありながら一般社団法人ロコ・ソラーレの代表理事を務め、セカンドチーム「ロコ・ステラ」の選手としても活動している。著書に『0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方』(講談社現代新書)がある。

 

ロコ・ソラーレHP:https://locosolare.jp/

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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