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ウクライナの善戦を支える「ドローン」がロシア軍を次々と撃破する理由とは

トルコ製の武装ドローンTB2が活躍。日本にとっての戦訓も

2022/03/23
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 ドローンの音も姿も、ちょっと上空になっただけで紛れてしまい、それが戦闘中ならば上空を警戒する余裕もない。またTB2の公開された動画からは、その多くが夜間に70~200mの超低空で忍び寄っていることが推測され、これも捕捉されにくい一因だろう。

実戦における野戦防空能力の限界

 しかも仮に捕捉ができたとしても、それがどこのドローンかを識別することも難しい。さらには、識別できたとしても撃破することは難しい。ロシア軍はTB2を撃墜したと繰り返し報じているが、信頼できる証拠は少ない。

 また民生ドローンはさらに小型低速なので捕捉は難しく、仮にミサイルで狙えたとしても発射した時点で大赤字だ。

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 第2に実戦における野戦防空能力には限界があるからだ。今回、TB2を捕捉することも可能だとの前評判だった最新の高価な地対空ミサイルが次々と撃破されている。その映像の多くは、陣地転換中などで稼働していないところを狙い撃ちにされている。

武装ドローンTB2運用の仕組み(バイカル社パンフレットより)

 これはリビアでもナゴルノ・カラバフ紛争でもTB2の常套戦術だったが、地上や空中から地対空ミサイルを監視して、次の展開場所への移動時、あるいは整備、休憩、燃料補給などのためにレーダーを停止した瞬間にドローンが忍び寄って撃破するのだ。ドローンは疲れもせず、撃墜されても安いうえに無人なので問題はない。

ウクライナ軍とトルコ軍の軍事的芸術

 しかも実戦では戦況に応じて部隊が分散するために、必然的にすべてのエリアをカバーすることはできない。機甲部隊であればしょっちゅう移動するが、野戦防空システムは移動中には使えないか、使えるタイプでも性能は低下する。だからといって、複数のシステムを動かしながら進撃する方法を採用すれば極端に移動速度は低下する。そもそも電子戦装備も地対空ミサイルも非常に高価であるため、全部隊が24時間稼働させられる数をそろえることは困難だ。

 この構造的な隙を巧みに見つけ出し、そこに侵入しているというわけだ。ウクライナ軍とそれを教育したトルコ軍の軍事的芸術だ。

 第3に、すでにドローンによる電子戦への対抗技術が確立しているからだ。先のナゴルノ・カラバフ紛争では、アルメニア軍はロシア製Avtobaza電子戦システムでTB2を乗っ取ろうとした。このシステムは、かつてイランが米軍の偵察ドローンの捕獲に成功したものと同じタイプだが、TB2側は即座に察知・反撃し、Avtobazaは撃破された。