24日、ロシアが隣国のウクライナに全面的な侵攻を開始した。25日にはチェルノブイリ原子力発電所をロシア軍が占拠。首都キエフの陥落も近いとされている。世界各国が経済制裁を進めるなか、プーチン大統領は「ウクライナ政府によって虐げられてきた人々を保護するため」と強気の姿勢を崩さない。
米国のバイデン大統領が「侵略者」と痛烈批判するプーチン大統領。一体どのような人物なのか。「週刊文春」は“ロシア最大のタブー”とされる彼の私生活を報じていた。当時の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2021年02月04日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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暴露動画で明かされた「プーチンのタブー」
「プーチン大統領のための宮殿」の存在を暴露した動画が1月19日に、YouTubeで公開された。2時間弱と長尺ながら、再生回数は7日間で8000万回を超え、CNNテレビは「最高峰の調査報道」と絶賛した。
問題の宮殿はロシア南部の黒海を望み、山手線の内側より広い7000ヘクタールの土地に立つコロニアル風大邸宅。延床面積は1万7000平方メートルで、11のベッドルーム、劇場や映画館、カジノやスパを装備。周囲には教会やワイナリー、プーチンがハマっている屋内アイスホッケー場も。詳細な見取り図や内装図、家具の価格も明かされた。
宮殿は2004年頃から建設が進み、中断を経て完成した。資産価値は推定1000億ルーブル(約1400億円)で、政権の利益誘導で大富豪となった取り巻きの新興財閥が建設資金を提供したとみられている。
宮殿をドローンで撮影したのは「反汚職基金」。この団体を主宰する反政府指導者のアレクセイ・ナワリヌイ(44)は昨夏に神経剤ノビチョクを投与されて重体となり、ドイツでの療養を経て、帰国直後の1月17日、当局に拘束された。
スクープの“情報源”について、「豪華な内装や家具が頭にきた建設関係者が情報を提供した」と明かしたナワリヌイは、「世界最大の賄賂だ」と強調している。
ロシア大統領報道官は「大統領は宮殿を持っていない」と否定したが、邸内には畳のトレーニングルームもあり、柔道愛好家のプーチン用であることは確実だ。情報機関の連邦保安局(FSB)が一帯を管理し、航空機の上空通過が禁止されているという。
プーチンは、この宮殿から約200キロ離れたソチにもコロニアル風に大改装した公邸を構えている。国内20カ所に宮殿や別荘を持つとの噂もあり、贅沢三昧の皇帝然としてきた。
だが、国民の大半はソ連時代に建てられた古くて狭い集合住宅に住むだけに、動画が「皇帝」への反発に火をつけた。