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“背番号15”の系譜。ルーキー守護神・大勢にうっすら漂う“筋肉劇場”の香り

文春野球コラム ペナントレース2022

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スターになるための「タイミング」を持った男

 そもそも開幕から1週間あまりで、これほど活躍したドラフト1位ルーキーなど、近年にいたでしょうか。過去数年のドラフト1位を振り返ると、2018年の高橋優貴投手が開幕ローテーションに入って活躍したのが目立つ程度。大勢投手は開幕から11試合ですでに7セーブをマークしています。巨人のルーキーが開幕戦でセーブを挙げたことは初めてだそうですが、原辰徳監督が新人を抑えに抜擢したこと自体が革命的でした。

 僕は、スターが誕生する時は実力だけでなく、「タイミング」も必要だと感じています。坂本勇人選手が高卒2年目にレギュラーになった時も、二岡智宏さんという名ショートが開幕戦で故障したことがきっかけでした。

 大勢投手もビエイラ投手やデラロサ投手が制球難に悩まされ、中川皓太投手がケガで離脱していなければ、開幕からクローザーに抜擢されることはなかったはず。大勢投手もスターになるべくタイミングを持っているのではないでしょうか。

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 ジャイアンツファンの方々には、「勝たなければダメだ」と言う厳しいファンもいると思います。でも、僕は声を大にして言いたいです。

 今後何が起ころうとも、大勢投手を生温かく見守りましょう――と。

 前述の通り、開幕からここまで活躍してくれたルーキーなんて久しぶりです。もうお釣りがくるくらい夢を見させてもらえたのですから、たとえ大勢投手が打たれようと、不振で2軍に落ちようとも温かい目で見守りましょう。過度な期待で彼を追い詰めないようにしましょう。それくらいの期待感のほうが、大勢投手ものびのびと実力を発揮してくれるんじゃないでしょうか。

 そして、大勢投手に限らず、開幕時点の巨人投手陣はなかなか魅力的な顔ぶれだと思いませんか?

 戸郷翔征投手、山崎伊織投手、堀田賢慎投手、赤星優志投手……と、20代前半の投手が開幕ローテーションにいる。これまでのドラフト戦略や育成計画が実ったとも言えますが、僕には新しい時代が始まったように感じるのです。

 たとえば2008年の西武打線は、1番の片岡易之さん(現・治大)から、栗山巧選手、中島裕之選手(現・宏之/現・巨人)、中村剛也選手と同年代の魅力的な選手がズラッと並びました。偶然に見えて、必然的な星のめぐり合わせで同時多発的に有望選手が開花していく。僕にはそのように感じるのです。

 シーズンは長いので、もちろんこのまま若手投手ばかりで乗り切れるほど甘くはないのでしょう。でも、僕には大勢投手が華々しくデビューした2022年こそ、巨人投手陣の黄金期の始まりのように思えてならないのです。

 エポックメイキングな年になりそうな今シーズンも、巨人の戦いぶりをしっかりと目に焼きつけたいと思います。

開幕戦を観戦する筆者 ©後上翔太

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