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瀧井 朝世
2017/12/16

クズで分別がなくて、魅力的な中年女性を書いてみたい──「作家と90分」藤野可織(後篇)

話題の作家に瀧井朝世さんがみっちりインタビュー

genre : エンタメ, 読書

前篇より続く)

ぶっ飛んだ着想はどこから来るのか?

――どの短篇も終わるべくして終わるところに着地している感じがありますが、短篇を書く時って、「ああ、ここで終わりだな」という感覚があるんですね。

藤野 あります。いつもだいたいの着地点はなんとなく想定しているんですけれど、「息子」の時みたいに途中で「ああ絶対これで終わりだ」と思って止める時もあるし、思ったよりも長くなる時もあるし、思っていた着地点と違うところに着地することも多いです。

 どうしても短篇が好きで、短篇ばかり書いてしまいますね。長篇が書けなくて何年も困っています(笑)。なんか、短篇って自分でもどこに行くか分かっていないながらも、なんとなく見えているところがあるんです。それで書きやすいのかな。

――文体が毎回変わりますよね。どのように選んでいるのですか。

藤野 それはもう、まず、人称です。一人称だったらその人にふさわしい文章になっていればいいなと思うし、そうでないならちょっと硬めにしてみたり、そうでもない感じにしてみたり……。

――それと、着想や話の展開がぶっ飛んでますよね。そこが魅力なんですが、普段から空想を広げているのか、換気扇の音のような日常からヒントを得るのか、あるいはニュースや時事問題から着想を得ることもあるのか……。

藤野 実際のニュースも絶対に頭に残っていますね。換気扇のような、ちらっと感じたことや見たことは「これ使えそう」と思ってストックしてます。現実には起こりそうもないことも頭の中にストックがあるので、それらを組み合わせて肉付けする感じ……なのかな……。

――たとえば巻末解説を書かせていただきました短篇集『おはなしして子ちゃん』(13年刊/のち講談社文庫)は、宇宙船が語り手だったり、鮭と猿を縫い合わせて“人魚”を作って出荷する話があったりと、日常から乖離した話も多かった。今回は日常の延長の話が多いのはたまたまでしょうか。

おはなしして子ちゃん (講談社文庫)

藤野 可織(著)

講談社
2017年6月15日 発売

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藤野 たまたまそうなりました。やっぱり自分の女性性というものを素材のひとつに使おうとすると、現実の話になりがちなのかもしれません。

――でも「ドレス」に出てくるお店で売っているようなアクセサリーが本当にあったら、藤野さん本当に身につけそう。

藤野 「やったー」と喜んで、めっちゃ買うと思います(笑)。

シュワルツェネッガーもスタローンも、私の中では男ですらない

――それと、先ほど短篇集は読むのも好きとのことでしたが、海外の短篇がお好きですよね。

藤野 めっちゃ好きです。私は人より読書量がだいぶ少ないと思うので、大きな顔をしては言えないんですけれども。岸本佐知子さんが訳されたものもどれも大好きやし、あとはブライアン・エヴンソン(短篇集に『遁走状態』『ウインドアイ』)も。藤井光さんが翻訳される短篇集も大好きですね。今年の夏から秋にかけて3か月ほどアイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加していたのですが、途中で藤井さん訳のハサン・ブラーシム『死体展覧会』という短篇集が出たのを知って、早く読みたいなあと思っていました。

藤野可織さん(左)と瀧井朝世さん ©山元茂樹/文藝春秋

――タイトルからして藤野さんが好きそう。ホラーっぽいものがお好きですよね。

藤野 そもそもはアクション映画が大好きなんです。アクション映画の何が好きと言ったら、動きが面白いというのと、破壊と殺戮があるという、それに尽きます。その動きが面白いというところを追求していくと、ホラー映画に行きつくんです。ホラー映画に出てくるものって、幽霊でもお化けでもエイリアン的なものでも、造形とか動きがすごく面白いじゃないですか。

――破壊が好きですか。

藤野 破壊最高です。映画でも爆発があるほうがいいです。自分に破滅衝動があるわけじゃなくて、すごく普通なんですけれど。

 それに、シュワルツェネッガーとかスタローンとかジェイソン・ステイサムが好きだというと、そういう男性がタイプだと思われがちなんですけれど、そんなことを考えたことは一度もないんですよ。ステイサムもシュワルツェネッガーもスタローンも、私の中では性別がなくて、男ですらないんです。ただ破壊と暴力の象徴なんです。つまり、その人たちが私の好みの男性なのではなく、私がそうなりたいんです。ちぎっては投げ、ちぎっては投げを自分がしたいだけなんです。

――出不精で体力のない藤野さんの対極の存在ですね。

藤野 そう、だからきっとそう思うんですよね。