それに、Mさんのように独特な主張をする保護者がPTAの会長や役員に立候補する例は、筆者が聞く限り、決して多くはありません(稀に聞きますが……)。だからこそ目立って皆の記憶に残り、「立候補する人は危険」という印象を残すのかもしれませんが、実際には珍しいケースと考えられます。
先ほども書いた通り、筆者も会長や役員に立候補して却下された経験がありますし、ほかにも同様の経験をした保護者を、何人も知っています。でも、みんな決して「特殊な思想をもつ人」ではありませんでした。ただ、「これまでのPTAを変えたい(適正な運営をしたい)」と考えている人がほとんどだったので(これも見方によっては“特殊な思想”なのかもしれませんが)、それで敬遠されてしまったものと想像されます。
ですから立候補者が出たときには、一部の保護者の判断で排除するのでなく、「会員みんな」に情報を公開し、その役に適しているかどうか判断してもらうのがよいのではないでしょうか。
PTA側がとった対応
先ほど紹介した中学校のPTAでは、その後、こんな対応を考えたそうです。
(1) 会長に立候補したMさんと、先に会長に内定していた候補者に、それぞれ「今後のPTA活動についての考え」を聞かせてもらう
(2) それぞれの考えを、PTAの広報紙に掲載する
(3) 各会員に「どちらが会長により適しているか」を判断して投票してもらう
これは、とてもフェアなやり方でしょう。
同PTA役員の女性は「会長を選ぶのは今の役員ではなく、あくまで“会員みんな”でなければならない。執行部は、会員がその判断をできるような情報を公表する必要があると思う」と話します。
PTA会長や役員に立候補する人は少ないので、役員さんがつい「めんどうだから、なかったことにしてしまおう」と考えてしまうのも、わかるのですが。でも「もし自分がその立候補者だったら」と考えたら、そうは言えないでしょう。
手はかかりますが、PTAのような団体には民主的な運営が必要です。これまで学校やPTAの現場で「立候補する人は危険」という言説が流布してきたのは、もしかすると「立候補者が出ると、民主的な選出のために手間がかかるから」という理由も大きかったのかもしれません。