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「いよいよ国鉄が姿を消す」――JTB時刻表編集長が語った鉄道と時刻表のニュース

「いよいよ国鉄が姿を消す」――JTB時刻表編集長が語った鉄道と時刻表のニュース

JR発足から30年。2017年は鉄道のあり方が大きく変化した1年だった

2017/12/30
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東西で“復活”がニュースに

『JTB時刻表』2018年1月号 ©JTBパブリッシング

 2017年3月4日のJRダイヤ改正の際、編集部が独断と偏見で選んだニュースの「番付表」があります。それによると、西の横綱は可部線(JR西日本)の延伸開業。可部線は、2003年に可部-三段峡間が廃線になりましたが、そのうち可部-あき亀山間(1.6キロ)が地元からの強い要望もあって事実上の復活を果たしたのです。廃線になった区間を再び列車が走るようになったのはJRとして初めてのこと。非常に大きなニュースでした。

 東の横綱は、特急「大雪」「ライラック」(JR北海道)の復活です。どちらも鉄道ファンとしては懐かしい愛称です。

 私たち『JTB時刻表』の変化もありました。時刻表は、その特性からして、なかなか差別化しにくい商品です。「JTBの時刻表だけ新幹線を1本増やしました」なんてことはできない。それだけに、少しでも見やすいように、読みやすいように工夫をしています。今年は、11月号で50年ぶりに索引地図をリニューアルしました。

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 時刻表が現在の版型になったのが1967年。当時からずっと、例えるなら秘伝のタレを継ぎ足すように、少しずつ微調整を重ねてきました。それを今回はガラッと変えました。

左が従来の索引地図、右がリニューアル後のもの ©文藝春秋

 パッと見比べただけでは路線図の違いがわかりづらいかと思いますが、一番大きな変化は、私鉄も全駅載せるようにした点です。もともとは『国鉄監修交通公社の時刻表』でしたが、いまはもう国鉄だけの時刻表ではない。私鉄も含めて、なるべく多くの情報を網羅しようという流れの中で、研究を重ねた結果、新しい地図の掲載に到りました。かけ声をかけてから、実現までに半年ほどかかりました。その後もいただいたご意見をもとにマイナーチェンジを加えています。

 見やすさの工夫としては、時刻表専用のフォントというものがあります。これまで時刻表以外には使っていなかったのですが、今年、「JTB時刻表」編集部が制作した初のカレンダー『鉄ごよみ』に使用しました。「JTB時刻表」の表紙を撮影しているカメラマンに写真を撮ってもらい、日付は時刻表フォント。365日すべての日に鉄道にまつわる「今日は何の日」が書かれていますので、読み物としてもお楽しみいただける、実に鉄分の濃い仕上がりです。手前味噌になりますが、離れていてもくっきり数字が読み取れると評判なんですよ。

三江線は3月末で見納めに

 2018年の注目ニュースは、大きなところでは小田急線の複々線化です。各駅停車と急行列車が別々の線路を走るようになるので、大幅に運行本数も増えますし、朝のノロノロ運転が常態化していた急行列車の所要時間も短縮されます。沿線の方にとっては、生活に変化が出るダイヤ改正になるでしょう。

 合わせてロマンスカーの新型車両GSE70000形もデビューします。私も取材に行きましたが、本当に美しい列車でした。反面、昔から慣れ親しんできたロマンスカーLSEが徐々に姿を消していくのではないかと思われます。

小田急の“顔”だったロマンスカーLSE ©文藝春秋

 3月末には三江線(JR西日本)が廃線になります。すでに全国から鉄道ファンが殺到しているようですから、いよいよ最終日が近づくと、全国的なニュースになるのではないでしょうか。

 細かいところでは、3月17日のダイヤ改正で国鉄時代から続いてきた特急「あさぎり」(新宿-御殿場)の列車名が「ふじさん」に改称されます。

 特急「踊り子」などに使われている185系も、引退はそう遠くないと思われます。引退した場合、JR東日本管内からは、定期特急列車で運行される国鉄型車両が姿を消すことになります。

185系(写真右側)もそう遠くない時期に引退か ©iStock.com

 1987年の国鉄民営化・JR発足から今年で30年が経ちました。日本中の鉄道から国鉄色が消えて、JRとしての色が濃くなる。そんな歴史の岐路にいるのではないかと感じています。

「いよいよ国鉄が姿を消す」――JTB時刻表編集長が語った鉄道と時刻表のニュース

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