大内編集長 ©文藝春秋

 2017年は大幅なダイヤ改正があったわけではありませんが、社会における鉄道のあり方が大きく変化した1年でした。

 従来の鉄道に求められていたのは、大量の人員をできるだけ早く運ぶこと。ところが、最近の流れとしては、追加のお金を払ってもゆったり乗る、あるいは鉄道自体がひとつの観光資源になる。これまでになかった付加価値を鉄道会社がサービスとして提供するようになりました。

超豪華寝台列車の広がり

 その変化を象徴しているのが、5月の「TRAIN SUITE四季島」(JR東日本)、そして6月の「TWILIGHT EXPRESS瑞風(みずかぜ)」(JR西日本)のデビューでした。これまでもJR九州の「ななつ星」が人気を博していましたが、超豪華寝台列車の運行が全国に広がりました。料金設定はかなり高いものの、予約をしようとしても何十倍もの倍率だとか。

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 ここ数年、いわゆる観光列車は各地で増えてきました。八戸線の「リゾートうみねこ」(JR東日本)や七尾線の「花嫁のれん」(JR西日本)、九州の「おれんじ食堂」(肥薩おれんじ鉄道)など、枚挙にいとまがありません。単一の路線だけではなく日本中を縦横無尽に走る豪華列車のツアーというスタイルは、新しいトレンドと言えるのではないでしょうか。

 8月にデビューした東武鉄道の「SL大樹」も大きなニュースでした。走っている区間(下今市~鬼怒川温泉)はあまり長くないものの、SLの運転に合わせて周辺エリアを観光地として再開発したことが特筆すべき点です。外国人観光客も訪れやすいように空港からの案内も変えています。東武鉄道は、SLデビューに先駆けて、4月には26年ぶりの新型特急車両となる「リバティ」も投入しました。観光への注力ぶりがうかがえます。

SLが観光の目玉に ©文藝春秋

 また、京王電鉄では5000系という新型車両がデビューしました。これまで京王電鉄には有料特急がありませんでしたが、2018年春からは5000系が座席指定の着席ライナーとして運用されることが決まっています。関西では、京阪電車が座席指定の有料車両「プレミアムカー」をデビューさせました。

感慨深かった583系の引退

 一方、「早く大量に人を運ぶ」ことで活躍してきた車両たちが、相次いで「さよなら」を迎えた1年でもありました。

 個人的にも感慨深かったのが583系の引退です。クリーム色に青いラインが入った、昼間は特急列車、夜は寝台列車という「二刀流」の画期的な車両でした。1968年にデビューして、全盛期には全国各地で活躍していましたが、定期列車としては急行「きたぐに」(大阪-新潟)が最後で、最近は臨時列車として使われていました。電車3段式という珍しいタイプの寝台列車で、中段と上段は天地がとても狭かった。

多くのファンから惜しまれながら引退した583系 ©文藝春秋

 銀座線の01系も3月に引退しました。東京で暮らしている人なら、一度は乗ったことがあるのではないでしょうか。本当に大量の通勤・通学客を乗せてきましたが、現在は熊本電鉄で第二の人生を送っています。

 同じく通勤列車として、高度経済成長期を支えてきた103系も、都内では既に引退していますが、ついに大阪環状線からも消えてしまいました。残っているのは阪和線、奈良線、九州の筑肥線ぐらいでしょうか。日本を作り上げてきた車両たちが引退していく、ちょっと寂しさのある年でした。

かつては都内にも多かった103系 ©iStock.com

「大量輸送」という意味では、2階建て新幹線の「Max」(E4系)も次々と新しい車両に置き換えられつつあります。1編成の定員が1634人で、世界でもっとも大人数を運べる列車なのですが、これも時代の変化なのでしょう。