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憎らしいくらい強い“ラスボス”ソフトバンクに勝つまでは…我らがオリックスの物語は終わらない

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/09/19
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俺たちの物語はこのラスボスを倒すまでは終わる事がない

 そう、正直、ソフトバンクとの思い出で良い事は何もない。だからこそ昨年リーグ優勝を果たしたオリックスだけど、俺たちファンにとっては、ソフトバンクとの決着はまだ付いていないのだ。去年のソフトバンクは選手の故障等もあってBクラスに沈み、優勝争いはロッテとのマッチアップだった。勿論、去年のロッテもとても強いチームだったけど、出来るなら今度は、長年パリーグ、いや、プロ野球界に君臨するソフトバンクに勝って優勝したい。そして「幸い」、シーズン終盤になって、ソフトバンクには主砲の柳田も、絶対的なエースの千賀も戻り、本来の戦力がほぼ揃っている。あの松田こそ、流石にベテランになってスタメンを外れる様になったけど、まだまだ今宮がいて、中村晃がいて、デスパイネがいて、甲斐がいる。先発には、千賀だけでなく東浜や和田がいて、抑えには森がいなくっても、モイネロがいる。そう、彼らかいる今だからこそ、俺たちはこの憎らしいくらい強いソフトバンクに勝って優勝したい。そしてその時こそ、オリックスは本当の意味での「パリーグの覇者」になれるからだ。

 そして加えて言えば、オリックスファンは変わり者でわがままである。だから昨年のただ一度のリーグ優勝で俺たちは満足なんかしていないし、それ以上のものを期待している。長い間、下位に低迷して来たチームを前にして、俺たちファンはあの弱かったチームが、何時しか強くなり優勝する日を、粘り強く夢見て応援して来た。そう、俺たちが夢見て来たのは、ちょうど「少年ジャンプ」の多くの主人公がそうであるように、甞てはひ弱かったどこにでもいるような少年が成長し、やがては甞て憧れたスーパースターを破って遂には頂点に立つ物語なのだ。だから、オリックスファンは山本由伸や吉田正尚を応援する一方で、壁に当たり伸び悩み、そしてそこから這い上がろうとする選手達を応援する。それは我々が勝手に、彼らの野球人生の行きつく先に「少年ジャンプ」の主人公のようなラストシーンがあるであろうことを夢見、期待しているからに他ならない。

 そして、そんな時、俺たちが夢見て来た「最後に倒すべき相手」は、何時もあの憎らしいくらい強いソフトバンクだった筈だ。そう、だからこそ俺たちの物語は、この究極の「ラスボス」を倒すまでは終わる事などないのである。だから俺たちは「この試合」にどうしても勝ちたいし、その思いは選手達もきっと同じ筈だ。そして俺たちはそこにこれまで苦労して来た選手にこそ、俺たちの物語の主人公として、その場にいて活躍して欲しい。だから行け!、T-岡田。村上がどんなに打っても俺たちの背番号55はお前だけだ。行け!、西野。俺たちはお前がどんなに二軍で苦しんだか知ってるぞ。行け!、大城。お前は「便利な控え選手」に甘んじる器でも歳でもない筈だ。

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 そして行け!、田嶋。俺たちはお前が、他のチームでならエースをはれる逸材だという事を良く知ってるぞ。ソフトバンクに勝てば初の二けた勝利、不器用な笑顔でのヒーローインタビューを、スタンドで待ってるからな。そして俺たちは、ファンも選手も一緒に、子供の頃に夢見たサクセスストーリーを実現させるんだ。全員で勝って、京セラドームで笑おうじゃないか。「少年ジャンプのヒーロー」になるのは俺たちだ。

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