今季も残り15試合を切ったというのに我らがオリックス・バファローズは優勝戦線の真っ只中にあり、僕らオリックスファンはひとつ勝っては優勝を確信し、ひとつ負けてはBクラス転落を覚悟するという何とも落ち着かない幸せな日々を送っている。幸せであることは間違いないが毎日のように、若き剛腕投手の快投にワクワクすると同時に怪我人続出に絶望したり、無死満塁の希望に縋ると同時に無得点に呆然自失したりとメンタルが過酷な状況であることもまた事実。
チームもファンも精一杯の戦いが続く中、その日の試合を戦い終わった選手、そしてファンである僕らをも癒してくれるのは間違いなく中嶋聡監督の試合後のコメントだ。勝っても負けてもそれだけは変わらない。多くのオリックスファンにとっては中嶋監督の試合後のコメントを全て読み終わって初めてゲームセットなのだと思う。少なくとも僕はそうだ。
チームとファンを勇気づける中嶋監督の「言葉の力」
どんな大逆転勝利の夜もどんな悲惨な敗北を喫した夜も、試合が終わればすぐにスマホを開き(勝った時はもちろん勝利監督インタビューが先だ)中嶋監督のコメントを待つ。中嶋監督のコメントを全て読むまではとても仕事に戻る気にはなれない。
ここまで「言葉の力」に魅了された監督は僕にとって故・野村克也監督以来。オリックスの監督としては初めてだ。それくらい中嶋監督の発する言葉には力がある。指揮官に必要な能力は様々あるが、その最上位にくるであろう資質の一つは間違いなく「言葉の力」だ。
自ら率いるチームの現場を力強い言葉で鼓舞できなくては優れたリーダーには絶対になれない。だが中嶋聡の発する言葉の力はチームどころかファンをも勇気づける。これは本当に凄いことだと思う。そんな中嶋監督の魅力的な言葉の数々を少しだけ紹介してみよう。
2020年8月21日 監督代行として一軍昇格
(GMから監督代行を打診され)「正直、無理だと思いました」
(立て直しに力を貸してくれとの期待に)「不安しかないですね」
(後半戦巻き返しのキーマンは?)「全員です!」
(期待するファンにメッセージを)「あまり僕に期待しない方がいいと思います。期待するのは選手にしてほしいなと。僕は大したことないんで」
2020年8月21日 監督代行として一軍昇格の朝
(二軍の風呂場で杉本に)「ラオウ、一緒に行くぞ」
2021年10月27日 優勝決定後の共同記者会見
(会見に同席しているラオウ抜擢について聞かれ)「ダメになったら取り替えようとは思ってましたけど、なかなかダメにならなかったです」
(優勝をファンにどう伝えたいか聞かれ)「本当にお待たせしましたと。おめでとうございますと言いたいですね」
2021年11月24日 日本シリーズ第4戦終了後
(第5戦の先発を聞かれ)「なんで言わないかんの? 山!」
2022年9月3日
(自力優勝が復活し白熱のペナントレースの山場について聞かれ)
「先とは思ってないですね。今も山だし、先も山だし、山だらけだよ。谷はない。谷に落ちたら終わってしまうやん」
2022年9月7日
(福田の走塁ミスについて聞かれ)「全てはこちらの指導力不足」