阿部智里さんがデビュー作から書き続けてきた大人気和風ファンタジー「八咫烏シリーズ」。最新刊の『亡霊の烏』が3月26日に発売となりました。
新刊の発売告知コラムで「八咫烏シリーズ本編は、『亡霊の烏』の次の巻、第2部6巻を以って完結」と発表した阿部さんに、本作の読みどころと今の心境を伺いました。
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――第2部1巻『楽園の烏』が刊行されてから約4年半。新刊『亡霊の烏』でついに作中の時間が前に進みます。
阿部 大変お待たせしました、という気持ちです。時間軸からすると第2部1巻でかなり先の未来を描いて、その隙間時間を埋めるような構成でしたね。過去編が続くのは良くないなとは思っていたのですが、私自身が読みたい話を書こうと思って進めたらこうなっちゃいました。今巻でようやく『楽園の烏』より先に進めてちょっとほっとしています。
――過去編を書いてきた今までと、心境に違いはありましたか?
阿部 あまり変わらなかったですね。八咫烏シリーズは「山内で起きたことをどんな風に切り取って小説にしていくか」という感覚で書いているので、とにかく書きたいピースはあるが、それを小説としてどうやってうまく収めようかという……未来軸だから自由に書けた、という感覚はゼロでした。
――今巻では、今まで内面が明らかでなかった雪雉や暁美といったキャラクターも出てきます。
阿部 澄尾の子らは、シリーズ構想中の初期からいた古株なんですよ。彼らは第1部の登場人物たちの子どもとして新たに生まれたわけではなく、むしろ逆算して父親のキャラができていったというか。雪雉も、第2部の流れを見据えて生まれたキャラですね。
――次巻はいよいよ八咫烏シリーズ本編最終巻となります。
阿部 新刊告知のコラムで「あとは因果応報」みたいな言い方をしちゃったんですが、そう言い切ると語弊があるかもしれないですね。作者のスタンスとしては、もう書くべき内容は決まっているので、あるべき形になろうとする物語の流れをとどめないよう、適切なところで手を離したいです。
阿部智里(あべ・ちさと)
1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学在学中に、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は松崎夏未氏による漫画化、NHKによるアニメ化、吉川英治文庫賞受賞と快挙が続く。
