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「野菜中心の料理が身体にいいと思い込んでいるが…」和田秀樹氏が指摘する高齢者の食生活の“大きな誤解”

『老人入門 - いまさら聞けない必須知識20講 -』より #2

2022/09/15
note

 老いてくると身体のいろいろな機能が衰えますが、代謝も落ちてきます。同じ栄養を摂っても若い人ならどんどん消化吸収されて身体中に行き渡りますが、老いてくると摂取の効率も悪くなるのです。胃の機能も低下しますから、ご飯のお替わりなんてできなくなります。

 ということは、必要なカロリーをなかなか摂取できなくなるということです。 

 量でカバーできないとなったら質で補うしかありません。とくに不足しがちなのはタンパク質です。肉や魚、大豆のような植物性タンパク質も含めて、あっさりした食事が続くとどうしてもタンパク質が不足しがちになります。

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「豆腐や納豆なら食べている」と思うかもしれませんが、やはり必要な量のタンパク質を効率よく摂ろうと思えば肉や魚は欠かせません。じつはタンパク質というのは、高齢者の身体を支えるためにはいちばん大切な栄養素になってくるのです。

筋肉の衰えだけでなく意欲の低下もタンパク質不足から起こる

 タンパク質が筋肉や臓器や骨格などの材料となるのは何となくご存じだと思います。 

 高齢になってくると、かつてに比べて情けないくらい筋肉が落ちてしまい、しかも運動してもなかなか元に戻りません。若い世代は筋肉は鍛えればたちまち盛り上がりますが、老いるとそうはいきません。筋肉の素となるタンパク質を摂らなければなおさらのことです。

 タンパク質の成分はアミノ酸ですが、アミノ酸はドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質をつくります。ドーパミンは意欲や「やる気」を生み出し、セロトニンは心をリラックスさせてくれます。つまりタンパク質は気力や集中力、思考力にも大きく関係してくるのです。

 それだけではありません。タンパク質には免疫機能を高める働きもあります。私たちは何となく体調が落ちているのを感じると「肉でも食べて元気つけよう」と思いますが、ただの気分ではなく根拠のあることなのです。

 そういったタンパク質の働きを考えると、高齢者にこそ必要な栄養素と気がつきます。 

 むしろ若い世代より意識して摂取しなければいけないことになります。