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「埼玉、海ないのに?」大宮で50年続く“24時間・年中無休の喫茶店”大盛りイカ入りナポリタンは穏やかな味だった!

大宮・伯爵邸インタビュー #1

2022/09/30

genre : ライフ, 社会

note

ゴーヤを出して「何だ、この料理は!」

――当時も……今もですが、喫茶店では珍しいですね。

 だから、昔はよくお客さんから「ここは何屋さんですか?」と聞かれましたよ。特に沖縄料理は同じ日本でも食材が違うから、せっかくメニューに載せてもなかなか注文が来ない。昭和40年代、埼玉の人はゴーヤなんて知らないでしょ。でも、まれに注文してくれるお客さんがいる。でも勇気を出して頼んだら苦い。「何だ、この料理は!」って、文句を言う人もいました(笑)。

――今でこそゴーヤチャンプルーは全国で知られていますが、当時はゴーヤという野菜自体が珍しかったんですね。

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 そうです。でも、私は自分の故郷の料理を広めたい一心で、そのお客さんに「1回、おいしくなくても、とりあえずあと3回、食べてみてくれ。それでも気に入らなかったら、お金は返すから」って。慣れさえすれば美味しいし、健康にもいい。そうやってコツコツと沖縄料理を広めていったんです。

店舗の外にあるショーケース。どのメニューもボリューム満点だ

――半世紀前から「伯爵邸」は、ゴーヤチャンプルーの普及に一役、買っていたんですね。沖縄料理のほかに、世界各国の料理もありますが、どうしてメニューに加えたのでしょうか。

 沖縄には「文化は海からやってくる」という思想があるのを知っていますか。中国や韓国、東南アジアなどと地理的に近く、昔から交流があった。そうした国々の文化を取り入れてアレンジして沖縄文化は発展していったんです。

パフェなどのスイーツメニューに使うような果物も豊富に仕入れている

――なるほど。だから、いろいろな国や地域の料理を取り入れているんですね。

 ええ、実は開店からちょうど10年経ったとき、フランスやイタリアの人を雇ったんです。というのも、この近くに英語教室があって、そこの先生たちがよく食べにきてくれていたので、それなら洋食ももっと充実させようと。でも本場の味のまま出すわけじゃない。日本の人も食べやすいよう、日本風にアレンジして出しています。