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「閉経すると女でなくなる」と考える女性も…44歳で出産した医師が乗り越えた“ホルモン補充療法”のリアル

2022/10/09
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症状の軽い人こそ要注意

──治療が必要なほど更年期の症状が重い人と、まったく症状がない人がいるのはなぜでしょうか。

船曳 その理由はよくわかっていませんが、思春期に月経前緊張症だった人はホルモンの影響を強く受けやすいと考えられるので、更年期の症状も重くなるかもしれません。

 注意しなければいけないのは、むしろ症状の軽い人です。どうせ更年期だから、病院に行くまでもないと思っているかもしれませんが、甲状腺ホルモンの分泌が不足していたり多過ぎたりしても更年期と同じような症状が出ます。不足の場合は橋本病、過剰の場合はバセドウ病という、どちらも女性の発症が多く治療が必要な病気ですから、受診して診断を得てください。

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船曳先生

──「ショーツがまったく汚れないので閉経してうれしい」という声もあります。

船曳 閉経をポジティブにとらえるのは大変結構なのですが、エストロゲンには膣の粘膜に潤いを与えて細菌から守るという働きがあります。分泌されなくなると、膣からの分泌液が減って膣の粘膜が乾燥し、萎縮して炎症を起こしやすくなるので注意しましょう。

──男性にキュンとしたら生理が再開したというアラ還女性の話をよく聞きます。

船曳 閉経して数年経つと色の付いたおりものや出血があることもあります。ごくまれに生理が再開することはあるにはありますが、不正出血を疑ったほうがいいでしょう。がんなどの病気のサインの場合もありますから、すぐに婦人科を受診してください。ちなみに恋をしたときに分泌されるのは、長年生理にかかわってきたエストロゲンではなくドーパミンです。

 長生きするということは、閉経後の人生が長いということにほかなりませんので、幸せホルモンのオキシトシンやセロトニン、快感を操るドーパミンをたくさん分泌して、愉しい人生にしましょう。これらのホルモンを増やす方法については、また別の機会に。

text:Atsuko Komine

※ホルモンとはそもそも何者なのか、そして、更年期にさまざまな不快な症状が出る理由や、排卵前後に性欲が強まるメカニズムなど、船曳先生の解説の全文は「週刊文春WOMAN2022秋号」に掲載されています。

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週刊文春WOMAN編集部

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船曳美也子(ふなびきみやこ)/産婦人科専門医。生殖医療専門医・指導医。1960年神戸生まれ。医療法人オーク会医師。神戸大学文学部心理学科卒業後、兵庫医科大学医学部を卒業。周産期診療を経て、不妊治療を専門に診療に当たる。心理学を活かしたカウンセリングにも定評がある。2014年、健康な女性の凍結卵子による妊娠に成功。出産に至ったのは国内初とされる。著書に『あなたも知らない女のカラダ』など。

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