昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ドラゴンズは大野奨太の獲得で本当に「正捕手は安泰」なのか

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/16

 ドラゴンズは今オフ、FA権を行使したファイターズの大野奨太捕手を獲得した。「ポスト谷繁」「正捕手不在」と言われて久しいドラゴンズにしてみれば効果的な補強をしたように思えるが、本当に「これで正捕手は安泰だ」と、手放しで喜んでいいのであろうか?

 大野奨太評を調べたところ「自分の意思を押し通す強気のリード」が最大の特徴のようだ。しかし、この言葉の裏を返すと「投手に気持ちよく投げさせるタイプではない」ともとれ、岩瀬や吉見といった実績十分のベテランも含め、ドラゴンズ投手陣と馴染むことが出来るのか。また自分を全面に押し出す地域性があるとは言い難い名古屋のドラゴンズファンの支持を得られるのか、些か不安もある。

影で支える女房役だった中村武志

 歴代ドラゴンズ正捕手の中で、最も気持ちよく投手を投げさせる事ができ、ファンにも愛されたのは中村武志であろう。

 星野仙一監督から鉄拳制裁を受けるシーンがテレビに映る度(実際にはイメージだけでテレビには映っていないのかもかも知れない)「がんばれ、タケシ!」と大勢のドラゴンズファンが涙したものだ。

 同時に間近で見ていたドラゴンズ投手陣は、例え自分のミスであっても代わりに制裁を受け、全く言い訳をしない(単純に怖かっただけかもしれないが)中村の姿を見て「申し訳ない。中村さんの為にも次はやってやる」という気分になったはずである。

 ヒーローインタビューでハンを押したように「中村さんのリードのお陰で……」を繰り返した99年のMVP左腕、野口茂樹の言葉からも、中村が如何に投手陣からの人望があったかが伺える。また、人一倍苦労し、人一倍人の痛みの分かる中村のリードは、投手の投げたい球を察し、持ち味を引き出す「影で支える女房役」そのものであった。

 コンプライアンスが叫ばれる現代で、中村の経験を取り入れる事は難しい。しかしながら「打たれた時の責任の取り方」は大いに参考にしてもらい、投手陣からの人望を勝ち得て「将太さんのリードのお陰で……」という言葉を是非聞いてみたい。

この記事の画像