小田急電鉄ロマンスカー7000形「LSE(Luxury Super Express)」の引退が決まった。最新型ロマンスカー70000形「GSE(Graceful Super Express)」と交替で、2018年度第1四半期の早いうちに消えるという。新型車両の登場は嬉しいけれど、慣れ親しんだ車両の引退は寂しい。少年時代に憧れた電車なら、なおのことつらい。
7000形LSEは1980年に第1編成が誕生し、1983年までに4編成が製造された。ふりかえれば、初代ロマンスカー3000形、愛称「SE(Super Express)」は流線型と斬新な塗装で登場した。2代目ロマンスカー3100形、愛称「NSE(New Super Express)」は、運転席を2階に上げ、1階最前列も客席とした「展望席」で、やや先んじて登場した名鉄パノラマカーとともに、世間を驚かせた。
それに比べると、7000形LSEの登場時は、3000形や3100形ほどの驚きはなかった。しかし、2代目に比べると先頭部の傾斜角が60度から48度と小さくなり、ヘッドライトなどの突起物が車体に収まってスッキリした。愛称板もスマートな行き先表示幕となり、流線型の車体に合わせて斜めになった。7000形は3100形をさらに都会的に洗練させたデザインで、ロマンスカーファンを喜ばせた。運行期間も長く、多くの人々にとって思い出の車両となったことだろう。
しかし、この引退は仕方ない。なにしろ7000形LSEは製造から37年も経過している。高速で走るから同じ世代の通勤電車より走行距離も長い。有料特急の第一線で30年以上も走り続けたことは奇蹟的だ。それだけに幅広い世代に親しまれ、現在、もっとも親しみのあるロマンスカーではないかと思われる。それにしても、なぜ7000形LSEは、37年間も走り続けたか。実は後輩の10000形の方が先に引退している。
7000形の次代のロマンスカーとしては、10000形HiSE(High Super Express)があった。10000形は1987年の登場だ。7000形よりも鋭角的なデザインの先頭車、中間車をハイデッカー構造とし、すべての座席からの眺望に配慮した名車だった。しかし、10000形は7000形より早く、2012年に全車引退してしまう。運命の逆転劇である。
その理由は、2006年に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」だ。バリアフリー新法とも呼ばれている。この法律の下で、交通事業者は、施設の新設または大規模改良を実施する場合は国土交通大臣に届けなくてはいけない。このとき、国土交通省令第111号の「公共交通移動等円滑化基準」を満たす必要がある。車両も施設にあたり、新規製造や大規模改造の場合は適用される。
車両を製造から長期にわたって使用し続ける場合、内装をリニューアルして延命させる。これが「施設の大規模改造」にあたる。10000形の場合は、リニューアル改造をしても、最大の特徴となるハイデッカー構造が車いす利用者に配慮できず「公共交通移動等円滑化基準」を満たせなかった。