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尻をサンダルで叩く、アルコールスプレーを顔に噴射…名古屋刑務所“受刑者暴力”が公表された理由

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 かつて受刑者を暴行死させた名古屋刑務所で、再び不祥事が発覚した。齋藤健法相が臨時会見を開き、12月9日、刑務官22人が3人の受刑者に暴行を繰り返していたと発表したのだ。司法担当記者が語る。

「昨年11月から今年の8月までに、20代から30代の刑務官22人が男性受刑者3人に暴行を重ねていました。いずれも、現在は単独室と呼ばれる“独居房”で行われたもの。小窓から胸倉を掴んで怪我を負わせたケースを筆頭に、部屋に食器を投げ入れる、顔や手を叩く、コロナ対策用のアルコールスプレーを顔に噴射する、尻をサンダルで叩く――などの暴力に及んでいたようです」

「誠に遺憾」と述べた齋藤法相 ©時事通信社

 名古屋刑務所は、暴力団など犯罪傾向の進んだ再犯常習者が多いとされる。一部の刑務官は「大声を出したり言うことを聞かなかったので暴行した」と話しているというが、中には複数の受刑者に何度も同様の行為をしていた者もいた。いずれも受刑者の処遇部門からは外されたという。

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「あれだけ大きな事件があったのに、このような事態になったのは正直理解できない」

 齋藤氏はそんな言葉を漏らしたそうだが、無理もない。名古屋刑務所は、2001年から02年にかけて、受刑者の腹に巻きつけた革手錠のベルトをきつく締め上げて死亡させた事件や、受刑者の肛門に消防用の高圧ホースで放水し直腸裂傷で死亡させた事件が相次いで発覚。法務省が長年放置していた刑務所改革に乗り出すきっかけになった。