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売ろうにも売れない、貸す相手もいない「地方の実家」…不動産のプロが語る、相続したときの“唯一の対処法”とは?

『負動産地獄 その相続は重荷です』#2

2023/02/17

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会

note

どうにもならない地方の実家、唯一の対処法は?

 逆にうまく運んだ事例もあります。私とおつきあいのある新聞社の記者さんから相談を受けたときのことです。地方の実家を相続したけれども、自分はすでに家を持っていたので処分しようと思ったのですが、これが売れない、貸せないということです。こうした相談には、実はなかなか良い解答がありません。敷地は約300坪。現場を実査すると、高台にあって、整形で見晴らしもよく、たしかに良い土地ではあるのですが、普通の家として売るには大きすぎます。さりとて区画割りして分譲するにも、そもそも分譲住宅マーケットが存在しません。

「お隣さんに話を持っていきませんか。もし関心があれば値段はどうでもよいですから売ってしまいましょう」

 情けないですが、私のアドバイスはそこまででした。しかし数週間後、記者さんから来た電話は弾んだ声。

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「売れました! お隣さん、敷地を拡げて、畑にしたいって」

 先方希望のお値段はなんと300万円。思いもしない大成功です。

 お隣さんに売れ。これが地方の実家の唯一ともいえる対処法です。意外と自分の土地は狭くて不満なので、安く買えるのなら買いたい、というお隣さんは多いものです。

 これは実にラッキーな話ですが、今後も多くの地方で人口減少、高齢化が進展していくと、全く売れず、貸せずにただ維持管理だけを強いられるという実家、元実家が大量に発生することが予想されます。需要が減り続けていくエリアでの不動産はとにかく早めに、どんな値段でも売れる間に「売る」に限るのです。

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

売ろうにも売れない、貸す相手もいない「地方の実家」…不動産のプロが語る、相続したときの“唯一の対処法”とは?

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