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「逃げたら殺してしまうぞ!」同居男性を虐待・衰弱死させた“稀代の悪女”がそれでも「殺人罪」に問われない理由

滋賀県「同居男性衰弱死」事件 裁判ルポ #2

2023/02/15

genre : ニュース, 社会

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「お前もやれ!」同居人とタイマン

 新たに虐待のターゲットにされたDに対しては、「風呂を覗かれた」「下着を取られた」「メシを食ってもお礼がない」といった理由で小林被告が交際相手をけしかけて殴らせていた。

 食事が腐った味噌汁をかけた冷や飯が1杯だけというのは相変わらずだった。小林被告はDが衰弱し、暴力を振るわれて傷だらけになっていくのを面白がり、「お前もやれ!」などと言って、同居人たちとそれぞれタイマンさせ、小林被告が「あーしょうもな」「もう飽きたわ」と言うまで続けられた。

「お前、逃げるなよ。逃げたらヤクザを呼ぶぞ。逃げてもすぐ見つけるからな!」

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 それでもDはほうほうの体で逃げ出し、同時に次男とその友人も「警察に捕まる」と逃げ出した。Dは警察に被害申告。小林被告の交際相手は懲役1年4カ月の実刑判決を言い渡され、次男の友人は罰金30万円、次男は少年院に送られた。

 だが、全員が小林被告をかばったため、小林被告は刑事責任を問われなかった。これを機に次女は家から逃げ出し、二度と近寄らなかった。

回復の見込みがない脳障害を負った被害者も

 一方、小林被告はこれ以降、いっそう猟奇的な虐待行為をエスカレートさせていった。

 2017年6月から10月にかけて起きた傷害事件の被害者の男性Eは、出会い系アプリで小林被告と知り合った。いつものように同棲に持ち込み、態度を豹変させて「逃げたら、ヤクザを呼ぶぞ!」と脅し、腐った味噌汁をかけた冷や飯を1杯だけ与えて、ガリガリに痩せさせた。

 当時、自宅アパートにはXとXの交際相手しか住んでいなかった。暴行には当時16歳だったXも加わっていたとされているが、最終的にEは一時心肺停止状態に陥り、病院に搬送された。命に別状はなかったものの、回復の見込みがない脳障害が残った。

 それでも懲りずに起こしたのが、今回審理されている傷害致死事件だ。知人を介して知り合った岡田達也さん(当時25歳)をいつもの方法で虐待し、衰弱させた。