2022年9月16日、名古屋地裁で詐欺罪に問われていた男に判決が下った。河野孝典(47)。累犯前科がある結婚詐欺師で、懲役4年6カ月の実刑だった。河野は「白血病のピアニスト」を名乗り、交際中の女性から治療費名目で計777万3000円を騙し取った罪に問われていた。
音楽系アプリで褒めちぎる
「河野に騙し取られた金額は、実際には2000万円を超えています。しかし、私が被った被害を、単なるお金の被害だと捉えないでいただきたい。河野のしたことは、意思を持った一人の人間を私利私欲のため、モノのように使い捨てる行為です。お金がなくなれば、性のはけ口として、ぞんざいに扱われました。
私はこの事件によって生きる希望さえ失い、何度も自殺未遂をしました。河野の行為は人を殺しかねない行為です。河野の行為がいかに残酷なものであって、私が受けた精神的苦痛がどれほど大きいのか、少しでも理解していただきたいと思います」
こう話すのは、この事件の被害者であるA子さん(29)である。A子さんと河野は2018年3月、音楽系アプリを通じて知り合った。A子さんの歌の投稿を聴いた河野が、「才能がある」「出会ったことのない特別な歌声だ」などと褒めちぎり、「自分のライブ配信で紹介したい」などと言って、接触してきたのがきっかけだった。
すでに2人の女性が同じ手口で被害に
その後、A子さんは河野とツイッターでも交流するようになった。ところが河野は2018年11月、突然姿を消してしまう。実はこの時期、河野は懲役1年6カ月の実刑判決を受け、刑務所に行くことになったからだった。別の2人の女性に対し、「自分は白血病で、未承認薬の治療費が払えない」などと騙し、1人を自己破産に追い込み、もう1人から130万円を騙し取ったことが理由だ。
2020年12月、仮釈放された河野はさっそくツイッターでA子さんに連絡を取った。「白血病の治療で連絡ができなかったが、A子さんの投稿が励みとなり、寛解状態まで回復した」とのことだった。これ以降、河野はA子さんに結婚を前提とした交際がしたいと迫るようになり、デタラメな生い立ちを話し、「自分はプロの音楽家だから、一般の人が稼ぐことができないほどの収入がある」などと言って、巧みに関心を引き寄せた。