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輸入そば粉の価格が暴騰、国産は余り気味…「日本のそば業界」が直面している“問題”とは《6次産業化の達人に聞く》

輸入そば粉の価格が暴騰、国産は余り気味…「日本のそば業界」が直面している“問題”とは《6次産業化の達人に聞く》

2023/02/28
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 均一のそば粉を自前で揃え、製粉・製麺の加工技術があれば、最適なそばを作ることができるし、それを販売して消費者に届けることができる。農家、製粉所、製麺所、そば屋、流通販売業者と別々だったものが一つになるイメージは確かに最強だ。しかし、現実には誰にでも簡単にはできることではない。

自前の乾燥工場

「そば作付けは誰かが声を上げて、均一な粉の作付けを大規模に行おうと言わなければ進化しない。しかし、小規模高齢化の現状では難しい。しかも安い輸入粉があるから身動きがとりにくい。商社も均一でないそば粉を扱いにくい。八方ふさがりのような状況だ。国も農業政策においてはブレイクスルーが欲しいところじゃないかな。そばもブランド化が必要だ。そういう意味で今がチャンス」と石井社長は強調する。

「今がチャンス」という石井社長

全国に広がりつつある「石井スタイル」

 スピーチの中で、大規模化に賛同している地域が少しずつ増え始めていると石井社長は話していた。秋田県にかほ市、福島県いわき市など他県でも、この石井スタイルの農作ビジネスが同時に進行しているという。6次産業化そしてブランド化。農業行政もそばについてはこのあたりの政策推進を目指しているのではないかと推測する。今回の受賞の本当の背景にはそうした部分が垣間見られるように思える。

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「今はウクライナ紛争やコロナ禍を含めて、そばを取り巻く状況は大きな転換期である」と石井社長はいう。日清・日露戦争以降、輸入そば粉に頼り切った状況になってしまったそばの生産もそろそろ国内自給率アップへ舵を切る時が来ているのかもしれない。美味いそばを食べて感激するその背景に、大きな農業政策の問題がぶら下がっていると思うとちょっと怖い気もする。石井社長の今後の戦略を見逃さないようにウォッチしていこうと思う。

美味い「十割のおろしそば」の背景にある事情は複雑

INFORMATION

丹沢そば本店
住所:神奈川県秦野市堀川541-3
営業時間:平日11:30~14:30LO、17:00~18:30LO(予約優先)
土日祝11:00~14:30LO、17:00~18:30LO(予約優先)
定休日:月(祝日の場合は翌日火)、第3土曜日(詳しくはHPをご覧ください)
http://tanzawasoba.jp/

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