中野ブロードウェイが竣工したのが1966年(昭和41年)。そしてその地下1階にある「デイリーチコ」が創業したのもこの年である。

 中央線沿線の中野界隈で育った人達は、小学生の頃に「デイリーチコ」のソフトクリーム6段や7段重ねをはじめて食べて感動し、学生時代には定番のデートコースとして「デイリーチコ」を利用してきた。そして、大人になってもオタクの殿堂のブロードウェイにキワモノを求めに足を運び、思い出したように「デイリーチコ」に立ち寄るというわけである。全世代に愛されてきたソフトクリームの最古参店であり、あこがれの聖地である。「ひらまよさん」こと、作家の平松洋子さんもたまにカオスの地下商店街に顔を出し、「デイリーチコ」を定点観察しに行くそうである。

 ところで、筆者は大衆そばの研究を長年してきたのだが、「デイリーチコ」でうどんそばが食べられることを不覚にも最近まで気が付いていなかった。

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「デイリーチコ」を目指し、中野ブロードウェイへ

 そんなわけで、さっそく初夏のような陽気になった3月中旬の平日午前10時頃、JR中野駅に降り立ち、中野ブロードウェイを目指すことにした。

久しぶりのJR中野駅

 中野駅前にはかつて数軒の立ち食いそば屋があった。南口には「赤い風船」「ミミ」などがあったが今はない。そして、創業50年の「立ち寄り処中野屋」も3月30日に閉店するという。元気なのは北口の「田舎そばかさい」、「梅もと」、「名代富士そば」である。

 中野駅北口改札を出て、サンモール商店街に入っていく。緊急事態宣言下ではあったが午前中から意外と人出が多い印象だ。

サンモール商店街は人も多い

 しばらく進むと、赤いバックに白字の「NAKANO BROADWAY」という文字が見えてきた。20年ぶりの訪問である。

NAKANO BROADWAYの入口に到着

 少し入ったところのエスカレーターに地下商店街の地図があったので、「デイリーチコ」の位置を確認して降りていった。

カオスな地下街へ

 しかし、この地下街、確かにカオスである。「ザックザック宝屋」という変わった名前の精肉屋、「ナカムラ水産」、「勝田商店」などの鮮魚屋、「野方青果」などの八百屋の前にはたくさんの人が押し寄せている。かと思えば、「おしゃれ工房」や「いちぜん整骨院」などが点在する。奥には洋服屋もある。まさにカオス商店街である。「デイリーチコ」はそんな商店街の中央にひっそりと細長い躯体で営業していた。さすがに午前中だけあって、学生さん達はいない。

やや奥の中央付近に「デイリーチコ」を発見
「デイリーチコ」の看板を発見
「デイリーチコ」は細長い躯体の店舗

 到着したのは午前10時半過ぎ。店は若いバイトのおにいさんとおねえさんで切り盛りしていた。さっそく、うどんそばは食べられるか聞いてみると、平日は11時からだというのでまだであった。