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なぜ中野ブロードウェイの「ソフトクリーム屋」に立ち食いそばが…? 普通のそば屋にあってここにない“ある物”の正体

2021/03/30
note

バイトの素晴らしいホスピタリティも印象的

 そして、味以外に「デイリーチコ」で印象的なことが2つあった。1つは、お店のバイトの方達が素晴らしいホスピタリティで接客してくれたことである。御礼申し上げたい。それともう1つ、店の右脇にあるベンチはソフトクリームを食べるために用意してあるのだが、訪れた時間には、ブロードウェイに買い物に来たおばちゃんたちが休憩に使っていた。空いている時間はご自由にどうぞということだろう。狭い店なのにこのフトコロの深さが素晴らしいと思った次第である。

バイトのお二人に感謝
ベンチには「ソフトクリーム専用」と書かれているが、空いている時間はおばちゃんたちの休憩場でもある

ソフトクリームの延長線上で、うどんそばというスタイル

「おいしくて安いソフトクリームを、学生さん達にもたくさん毎日、食べてもらいたい」というオーナーの鈴木正博さんの思いで「デイリーチコ」はスタートしたのだと思う。そして、ソフトクリームの延長線上で、うどんそばを気楽に楽しく食べてもらいたいというスタイルになった。しかし、そこには従来の大衆そば立ち食いそば屋にあるような一種の緊張感とか雰囲気みたいなものが微塵も感じられない。ソフトクリームで培ったノウハウがうどんそばの販売にも十分に活かされている。お客さん目線の安くてたくさんの天ぷら。小ぶりの天ぷらを2つ選べる「てんぷらうどんそば」。うどんそばのメニューの豊富さと安さ。そして味のよさ。温と冷がチョイス可能なこと、創意工夫した「ダシいりこ」や「あげ玉カレー味」などのサービストッピングがあることなどである。

 買い物に来たおばちゃんが「キツネそば」をさくっと食べて帰る。学生さん達がソフトクリームと「てんぷらうどん」を食べてニコニコして帰っていく。そうしたフレンドリーな味の世界が、すべての世代の客層に伝わり、店の雰囲気にもなり、その味が中央線文化として伝承されていくのだろうと感じ入った。「デイリーチコ」の商売の秘訣がそこにあると思う。

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『今度は、どのうどんそば、ソフトクリームを食べようかな』というウキウキ感が湧いてくる。また行こうと思う。今度はソフトクリーム8段重ねだ。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

「ソフトクリーム・讃岐うどんの店 
 デイリーチコ」

住所:東京都中野区中野5-52-15
   ブロードウェイB1F

営業時間:
ソフトクリームは10:00~19:00
うどん・そばは11:00~18:00(土日は12:00から)
※なお3月30日(火曜日)は臨時休業日となっています。

なぜ中野ブロードウェイの「ソフトクリーム屋」に立ち食いそばが…? 普通のそば屋にあってここにない“ある物”の正体

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