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“2点取る応援”と“4点取る応援”は全く違う…スワローズ元応援団が教える「チームを勝たせる応援」とは

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/07
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 こんにちは。元スワローズ私設応援団員の佐々木です。

 早いもので応援団を引退して1年が経ちました。

 大きな旗を振ることもなくなり、大きな声を出すことが無くなったせいでしょうか。腹筋が落ちたり、肩の筋肉が固くなって五十肩になったり……以前はシーズン前には自分の「声を出すベスト体重」に調整していたりしたのですが、その必要もなくなり、いろいろ不健康になりました。やっぱり応援は健康にいいですね(精神的な健康に良いとは限りませんが)。

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 文春野球の監督から「交流戦なので相手チームのことも触れてください」とのサインが出ているのですが、うーん……あ、姉がオリオンズファンだったので愛甲選手と堀選手のたぶん実使用ユニフォームとかバットとかが家にあったな。

 あと会社の後輩G君がマリーンズファンで「ゲーフラ職人」、というところは置いておいて、マリーンズと言えば良い意味で独特な応援方法で素晴らしいと思います。声も凄く出ているし、あれはどういう方法で応援をスタートして、次に何やるかとか、どうやって指示を出しているのだろう、などなど、すごく気になってしまうんです。

ファンと応援団はバッテリーの関係

 じゃあ、スワローズの応援はどうやっているんだよ!? という話になるのですが、ここから書く話はコロナ禍前までの「私のやり方」であって、このやり方がいい! という話ではないです。団員それぞれの個性があって良いし、今の若い団員が今のやり方で時代を作っていくべきなので、ファンの皆さん、温かく見守って育ててあげてくださいね。

 応援指揮者(以下、リード)は、団員が持ち回りで担当し、コールや応援歌のタイミングなどを決めます。ファンを見ながら、気合いと強気で引っ張る団員、“変化球”で和やかにして声を出してもらう団員等々、応援の内容にも個性があります。

 捕手が投手の力量を引き出す配球をするように、リードはファンに気持ちよく声を出してもらえるように、テンポよく、応援の流れを切らさない応援の組み立てをするわけです。ファンと応援団は実はバッテリーのような関係なのかもしれませんね。

応援のピークをどこに持っていくか脳内で組み立てている

 私は、リードをやる前の回が終わった時点で、次の回の打順を確認し、応援の内容を組み立てます。何点差なのか? ファンファーレがある選手は何番目か? 早打ちの傾向のある選手がいるか? 代打の可能性がどこにあるか? チャンステーマを何処で出すか……等々を判断基準に「応援のピークを何処に持ってくるか?」を決めて、そのピークに向かって応援を脳内で組み立てていきます。

 イニングが始まる直前に台上に立ち、場内演出やビジョンに流れるCMが終わったら応援開始。応援をお願いする口上を述べ、終わったら「君こそヒーロー」に合わせて3・3・7拍子スタート。この終わりが相手投手の投球練習終了と同時になるように口上のスタートタイミングと長さをうまく調整できると、流れるように選手登場曲が始まります。

 曲が終わって応援スタート。「かっ飛ばせ」や選手名のコールなどでカウント1-1は1-2になったあたりで応援歌をスタートしますが、早打ちの選手や、早く打つ指示が出ていそうな試合は応援歌を早めに。応援歌が流れている最中にヒットやホームランが出るとその流れで大きな歓声が流れやすいので、意識的にバッティングカウントでは応援歌が流れている状態を作っていました。プロ野球ニュースでも応援歌をバックにヒットやホームランを打った映像が流れるとかっこいいと思いますし。

©時事通信社

応援歌が止まった瞬間にアウトになることを避けたい

 ただ、あまり応援歌が長くなるとどうしても声が小さくなってきますので、途中で応援歌を止めてコールに切り替える場面が出てきます。ここでどうしても避けなければいけないのは「応援歌が止まった瞬間にアウトになる」こと。無音の状態でアウトになるとスタンドが白けたように見えて凄く盛り下がります。

 とはいえ急に止めるわけにもいかないので、応援歌が終わったタイミングではなく繰り返しの1~2小節目には止めるサインを出すのですが、相手投手の投球間隔を考え「応援歌が終わった瞬間に投手が投げる直前にはならない」というタイミングを先読みしてサインを出します。

 応援歌を止めて、次のコールを指示して、ファンが声を出し始めるまでが無音と考えると、大体6秒くらい。完璧なタイミングで止めたと思っても牽制球が入ったりするとタイミングが狂うので、これが簡単なようで難しいんです。

 終わってすぐスタートできる応援が投手へのプレッシャー(手拍子をだんだん早くして最後はワーってなるやつ)しかなくなるので、この6秒のゾーンに入りそうになると台の上で冷や汗が出ました。

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