思い出す、リトルリーグ時代の記憶

「こんなピッチャー、バチコーンいったれ!!」

 僕が小学生高学年の頃、藤井寺のリトルリーグのチームとの練習試合の時に相手チームの監督から言われた言葉。

 空には雲雀が囀ずっていようか野には陽炎が燃えていようか。

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 蓮華、タンポポの花盛り。

 麦が青々と伸びてその間を菜種の花が彩ろうかというような新緑の季節でした。

 ピッチャーをやってる子が軒並み発熱して休んでしまい、急遽ピッチャーをやらされた私。

 めちゃくちゃ嬉しかったんです。

 幼心にずっとやりたかった、「1球ごとにフォームを変える」ピッチャー。

 上から投げたり横から投げたり、足を高く上げたり上げなかったり。

 何してんねん、こいつ。

 という視線をものともせず、1回、2回、3回とゼロに抑え、迎えた4回。

 先頭、相手の4番バッターが打席に入ったその時に、この言葉が飛んできました。

 メラメラと怒りの炎が燃え盛り、

「バチコーンできるもんならやってみぃ!!」

 と足を高く上げてオーバースローで投げた渾身のストレート。

「バチコーーーーーーン!!!!!」

 というけたたましい打球音と共に、ボールがレフトフェンスを越えていきました。

「真芯に当たったらほんまにバチコーンって音、するんやね」

 と学んだあの日から、約30年。

 小学生の頃のそんな出来事など、それこそバチコーンと記憶の彼方に飛び去っていたのに。

開幕から無失点、そして31イニング目に……

 2023年5月9日、甲子園での阪神戦。

 19時56分。

 その時がやってきました。

 7回表のスワローズの攻撃、先頭バッターは5番、サンタナ。

 相手は阪神の「村神様」、村上頌樹投手。

 この日まで開幕から25イニング連続無失点というとんでもない記録を継続中だったこの超新星右腕は、5月に入ってから全試合で7得点以上を上げていた好調スワローズ打線に対して6回まで無失点。

 この時点で1963年に同じく阪神の中井悦雄投手が打ち立てた【開幕から31イニング連続無失点】というセ・リーグ記録に並び、あとアウト3つで新記録達成となるこの場面。

 2-2からの5球目。

 この日唯一といっていい村上投手の失投。

 甘く入ってきたストレートをサンタナが振り抜いたその瞬間。

「バチコーーーーーーン!!!!」

 真芯の真芯に当たった時のあの音。

「高く上がった! 高く上がった! 浜風ないぞ! 見送ったーーー!!」

 という実況の言葉とともに広い甲子園の左中間最深部に飛び込んだ白球。

 悠々とダイヤモンドを一周するサンタナを見ながら、あの日の記憶がフラッシュバックしてきました。

 だけど……

サンタナ ©時事通信社