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“攻めるファウル”を打ち出したら誰にも止められない…代打の切り札・川端慎吾、何が凄いのか

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/04/19
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ここ一番での勝負強い打撃が足りなかった昨年の日本シリーズ

 球団史上初のリーグ3連覇に向けてスタートした2023年シーズン。

 昨年、わずかに届かなかった日本一。10月30日、神宮球場で高津監督が見せたあの悔し涙がいまだに脳裏に焼き付いています。

 あの光景を思い出すと、いまだに涙が出てきます。

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 今シーズン、もう一度あの頂に立つために必要な事。

 それは、ここぞという時に抑えられるかどうか。ここぞという時に打てるかどうか。

 最後はこれに尽きると思うんです。

 点を与えなければ負けることはないですが、やはり点を取らないと勝てない。

 去年わずかに足りなかった“ここ一番での勝負強い打撃”。

 一昨年の日本一の時にはあって、去年はなかったもの。

 それは、代打の切り札・川端慎吾選手の力でした。

川端慎吾 ©時事通信社

代打の切り札・川端慎吾という存在

 代打の切り札というのは普通の代打とは違って相手の勝ちパターンの投手の時に出てくるので、それを打ち崩すというのはかなり難易度が高い。

 そんな痺れる場面での代打で、川端選手は2021年シーズンにはあの真中満さんの日本記録である31安打に続く30安打を放ち、代打打率は.366を記録しました。

 そして、代打での打点は18。

 この18打点というのはただの打点ではなく、そのほとんどが“ここぞ!”という痺れる場面でマークしたもの。

 1994年に阪神の真弓明信さんがその抜群の長打力から、17安打で30打点を叩き出したという驚異的な記録があるので、シーズン代打打点記録には及びませんでしたが、2021年シーズンは川端選手のおかげで勝てた試合がおそらくは10試合以上あったということです。

スワローズファンが一生忘れることはないだろう“日本一を決める一打” そして去年…

 2021年11月27日、日本シリーズ第6戦。

 スワローズファンが一生忘れることはないであろう、日本一を決めたあのレフト前タイムリー。

 あの試合、もし川端選手が打てずに引き分けていたら、日本一を逃していたかもしれない。

 そして、2022年10月30日、日本シリーズ第7戦。

 5点を追う5回裏、1死一、三塁のチャンスで打席に立った川端選手は2-2からの低めのストレートを見逃しての三振。

 あそこでもし一本出ていたら、4-5が6-5になって第8戦までもつれていたかもしれない。

 本当に、毎回が紙一重の場面での勝負。

 この場面をシーズンを通して任せられるのは、やはりこの人しかいないと思っています。

川端慎吾の凄さ“攻撃的ファウル”

 川端選手の何が一番凄いか。

 それは“攻撃的ファウル”を打てることだと思っています。

 逃げるファウルでなく、攻めるファウルなんです。

 僕が一番凄いと思った川端選手の打席があります。

 それは、2021年8月31日に岐阜で行われた巨人戦。

 5-10と5点ビハインドで迎えた8回表、無死満塁での打席。

 相手は勝ちパターンのセットアッパー、デラロサ。

 最後はライト線へ痛烈な2点タイムリー二塁打を放つのですが、以下がその打席での内容です。

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