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ヤクルト三輪広報が明かす村上宗隆“サヨナラ打”の瞬間と、“世界一の捕手”中村悠平への熱き思い

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/03/31
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 みなさん、ご無沙汰しておりました。東京ヤクルトスワローズ広報部の三輪正義です。いよいよ今日からプロ野球開幕! そして「文春野球コラムペナントレース2023」もひと足先に開幕。今年も「文春スワローズ」の一員として、リーグ優勝、そして日本一に向けて、筆を揮いたいと思いますので、よろしくおねがいします。

キービジュアルと同様に「さあ、行こうか!」のポーズをとる筆者 ©三輪正義

やっぱりWBCのことを書かざるを得ない

 さて……シーズンの展望の前に、やっぱりWBCについては書かざるを得ません。

 先日、山田哲人、村上宗隆、中村悠平、高橋奎二が帰国して、初練習をするというので、まずは彼らをねぎらおうと戸田球場の室内練習場にかけつけました。するとそこで観た光景には驚かされました。彼らの前に置かれた色紙の山。WBC組が、お世話になっただろう方々からの求めに応じて、サインをしているのです。さすがスーパースターたち。嫌な顔ひとつせずに、ペンを走らせる姿に心を打たれました。

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ひたすらペンを走らせる侍の姿に

 日本に元気と勇気ととんでもない経済効果をもたらした彼ら。僕もその波に乗り遅れるわけにはいきません。公式アプリの視聴者プレゼント用にあらゆる手を使って用意した5枚の「JAPAN」のタテ縞ユニフォームと5枚のサイン色紙。それをそっと差し出し「本当申し訳ないんだけどいい?」と言うと、こちらにもサインをしてくれる彼らのなんと頼もしいことか。これで公式アプリの会員も、入ってない方も大喜びは間違いはありません(この模様は公式YouTubeチャンネルで先行公開しています!)。

 

 ここだけの話ですが、僕……WBCをしっかり観ていないんです。とくに、盛り上がりも最高潮に達した、対メキシコとの準決勝。朝から自宅で3人いる子供をあやしながら、テレビ観戦をしていました。不振に苦しむ村上は3三振……。しかし、準々決勝から村上の代わりに4番に入った吉田正尚が同点3ラン! テンションが上がりましたが、ここで娘たちをお稽古ごとに送り出す時間となってしまいました。ピアノ教室に行った長女を待ちながら、その横の公園で次女と三女のシャボン玉遊びを手伝いつつスマホの「一球速報」をチラ見します。

メキシコ戦勝利を音で感じる

 4-5。日本1点ビハインドで迎えた9回裏。「大谷、二塁打」「吉田、四球」と画面が伝えます。次は村上……(ここは送りバントだろうか?)いち野球好きおじさんとして、思案を巡らせます。三女が滑り台に上がるので支えていると、その直後「うおおおおお!」という雄叫びが公園の周りの住宅や、運動施設からこだましました。渋谷ならともかく、郊外の住宅街での絶叫に耳を疑う僕と娘たち。

 これは落胆か歓喜か!? 勝ったのか負けたのか!? 現役時代、勝負の別れ道、控え選手としてベンチ裏でアップをしながら、あまたの雄叫びやため息を聞いた僕です。状況を見ずとも、ゲーム展開が判断できる“訓練された僕の耳”が確信しました。

「勝ったな――」

 約1分のタイムラグのあと、一球速報は「村上宗隆、二塁打。日本、サヨナラ勝ち」を伝えます。勝ちを信じていなかったわけではないけど、昨年、56号を最終打席に打ってシーズン記録を抜いた村上がこういう場面で仕事をする。なんという星の下に生まれた男かと、郊外の、のどかな公園の片隅でひとり感慨にふけってしまいました。

保育園児とキャッチボールをしながら感じたWBC優勝

 翌日の決勝は、午前中から僕のライフワークとも言える保育園での「投げ方教室」の日でした。保育園の園長先生からは「こんなときにすいません……」と恐縮されましたが、子供たちにとっては日本が世界一になった日、そんな記念すべき日に野球に触れ合うって、きっと何かを感じてくれるのではないか。そう信じて一緒にボール遊びをしました。

 のちに優勝の瞬間をテレビで見ましたが、大谷翔平と抱き合っている中村悠平の笑顔を見たときには、胸に迫るものがありました。僕自身現役時代は、山田、村上、高橋とも一緒にグラウンドに立ちましたが、苦しい時を最も一緒に過ごしたのは中村です。

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