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大学生相手に1イニング7失点も…ヤクルト中継ぎ左腕・山本大貴が乗り越えてきた“挫折と屈辱”

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/07/08
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プロ2年目オフのプエルトリコ“修業”で学んだこと

「あの年はファームでも調子良く投げれてて、ちょっと(良い)兆しが見えた感じだったんですよ。それが(プエルトリコで)環境の違い、マウンドの違い、ボールの違いで、やっぱり出たんですよね、フォアボールが。またイップスみたいな形で、初回から連続フォアボールで降板になって、試合をぶち壊したっていうことがあったんですけど、もう悔しくて。せっかく良くなってきたのにと思って……」

 その試合を含め、プエルトリコでは4試合に登板(先発3試合)して防御率10.50。計6イニングで四死球の数は9に上った。だが、この海外での武者修行は山本に“変化”をもたらす。

「(選手が)みんな楽観的というか、切り替えの仕方がすごく上手くて。どんなに打たれたピッチャーでも次の日はもう何もなかったかのように、いつもどおりに振る舞ってるんで『同じ人なのかな?』って思うぐらいで(笑)。その時は落ち込んでるんですけど、次の日になったらちゃんと課題を反省しつつ、練習しつつ切り替えてるんですよね。彼らのこのメンタリティーは勉強になるなと思って、それがきっかけで僕もちょっと気持ちが楽になったというか、そこからけっこう良くなっていった感じですね」

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 山本が派遣されたクリオージョス・デ・カグアスには、スワローズファンにとって馴染み深い選手もいた。2015年のセ・リーグ制覇に「勝利の方程式」の一角として貢献し、この2019年のウインターリーグを最後に現役生活にピリオドを打つことになるオーランド・ロマンである。

元ヤクルト・ロマンの気遣いに感謝

「試合が終わるといつもハイボールを飲んでたイメージですけど(笑)。でもピッチャーって1人になる時間が多かったので、よく話しかけてくれて。ロッカーも近かったので、なるべく僕が居やすいように気を遣ってくれてたのかなっていうのは感じてました」

 翌2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が大幅に遅れる中、7月17日の日本ハム戦(札幌ドーム)で2シーズンぶりの一軍マウンドに上がると、12試合に登板して防御率2.63。プエルトリコで取り組んだチェンジアップを新たな球種に加えるなど、メンタル面のみならず「(ウインターリーグの経験を)多少なりとも反映できたのかな」という。

ロッテからヤクルトへ移籍。「これはチャンスなのかもしれないっていう嬉しさ」

 そして昨年、山本にとって大きな転機が訪れる。一軍登板のないまま迎えた7月29日、トレード期限が迫る中で告げられたヤクルトへの移籍。驚きと共に「これはチャンスなのかもしれないっていう嬉しさ」があった。

 昨年は移籍後の一軍登板は5試合にとどまったが、キャンプからヤクルトの一員として過ごした今シーズンは、ここまで自己最多を更新する16試合に登板して防御率3.45。中継ぎ陣では唯一の左腕とあって、出番は多岐にわたる。4月9日にはプロ初ホールド、6月20日には前述のとおりプロ初勝利を挙げ、現在は6試合無失点を継続している。

幼い娘に「キャッチボールが仕事」じゃなく、ピッチャーと認識させたい

「気持ちを前面に出すというか、勝手に出ちゃうんですよね。その姿を見て、野手の人が『よっしゃ行ける!』ってなってくれれば、僕もこういうスタイルでやってて良かったなって思いますし、そこでファンの方や球場の空気が一気に変わるっていうのが理想なので。まだまだそこには達してないと思ってるんですけど、やっぱり(名前を)コールされて球場が沸いて『こいつが出てきたら大丈夫だ』って思われるようなピッチャーになりたいっていう気持ちは常に持ってます」

 そんな山本には“目標”がある。今年で3歳になる娘に自分が「ピッチャー」であることを理解してもらうことだ。

「僕の仕事がキャッチボールだって認識なんですよ(笑)。試合で投げて帰ると『パパ、キャッチボールしてきたの?』っていうから『してきたよー』って言ってるんですけど、娘に理解してもらえるまでは野球を続けたいなと思いますし、せめて『キャッチボール』からピッチャーに昇格したいですね」

 いくつもの挫折を乗り越えて、ヤクルトで掴んだ“居場所”。まだ幼い愛娘が自分の仕事を理解するようになるまでは、なんとしてもそれを守る。

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