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《24年目の“離婚”はあるか?》自公対立の“発火点”となった「28区問題」をキーマンに聞いた

2023/07/20
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自民党選挙対策委員長・森山裕氏へのインタビュー「自公連立解消? そんな怖いこと」を一部転載します。(取材・構成 塩田潮・ノンフィクション作家、月刊「文藝春秋」2023年8月号より)

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 通常国会は6月21日に閉会となった。岸田文雄首相は5月までの「外交実績」などを武器に、本気で衆議院解散を狙ったが、予想外の逆風で不発に終わる。最大の誤算は自民党と公明党の対立であった。原因となったのは衆院選の候補者調整だ。自民党側の責任者だった森山裕選挙対策委員長に、自公関係の現実と深層についてインタビューした。

森山氏 ©時事通信社

――1年前に自民党選対委員長に起用されましたが、岸田首相の指名だったのですか。

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 森山 全国140の小選挙区の新しい党の支部長を選任しなければいけなかったことだと思いますよ。ある意味で、これは国会対策の国会回しと一緒です。国会対策委員長で慣れていたからこっちをやれということだったのではないでしょうか。

――首相は次期衆院選での公明党との選挙調整の問題が頭にあり、国対委員長時代に公明党との接触が長かった点を見込んで森山さんを選対委員長に起用したのでは。

 森山 それは全くないと思います。

――岸田首相は就任から1年9カ月が過ぎました。就任前と比べて、何か大きな変化を感じますか。

 森山 特別、変化は感じません。ただ、総理になっていろいろな決断をなさったけど、ウクライナ電撃訪問など、びっくりするような決断もいくつかありました。思い切った政策判断など、大胆さはあるのでは。

 一方、政策のスピード感では、菅義偉前首相がずば抜けていました。そこは見習うべきものもあるなと思います。それができた体制も、非常に大事なことではないでしょうか。

――今年の1月5日の夜、東京の赤坂で岸田首相と会食したという記事を読みました。会談の目的は。

 森山 もともと「10増10減」の公職選挙法の改正法案をどう成立させるかというところからスタートしました。昨年の11月に法案が成立したから、次は全国の支部長選任を確実にしなければなりません。その話をしたように記憶しています。

――1月の時点で、すでに首相の頭に解散・総選挙のプランがあって支部長の選定を急がせたのでは。

 森山 解散とは関係なくて、法律に真摯に向き合うという意味からすると、早く支部長を決めるということだったのではないかと思います。

「10増」の3つはきつい

――通常国会での岸田首相の解散・総選挙作戦が不発に終わった最大の原因は自民・公明両党の関係悪化だったと見ていますが、両党は今、不協和音という状況ですか。

 森山 不協和音ではないと思っています。ここまで23年以上も連携体制を組んでいます。この枠組みは非常に大事にしていかなければいけないことだと思います。

岸田文雄首相 ©文藝春秋

――だけど、東京での候補調整で対立が表面化し、公明党が東京の小選挙区で自民党の候補を支援しないと言い出しました。

 森山 ことの起こりは東京の選挙区で1~2議席、公明党に頑張っていただくところがあり、いろいろ話があって、1つは公明党が選挙区を、「10増10減」の改正公選法施行による東京12区(新制度では北区と板橋区の北部)から、新しい東京29区(荒川区と足立区の西部)に変えることを考えた。自民党の東京都連にすると、調整を要する選挙区に新しい選挙区が一部入るから、その点で理解をもらうため、選挙区の説得も非常に大変なんです。そこで議論があったり、行き違いがあったり、ということだったと思います。ほかにも「10増10減」のうち、埼玉が1人、愛知が1人、計3つの選挙区で折り合いがついていない状況が今、続いています。

――「東京での自公対立」の発火点として大きく報じられた新28区(練馬区の東部)の問題は、なぜあんな大騒動になったのですか。